綾辻行人の助手2 (ページ12)

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41話ページ12

綾「今の間に考えたが、思い付かない。君が先程云った『まず云うべきこと』とは何のことだ？」

綾辻先生がそう云うと直ぐに辻村さんから「昨日の事件の話です！」と返答が来た。
この二人が色々云い合っている間、私は空気になる。

辻「林間学校で小学生が殺された事件で特務課の警告を無視して、勝手に事件を解決したでしょう！？あれは困ります！」

綾「何故だ？」

辻村さんの糾弾に平然とそう云う綾辻先生。
__まぁ、綾辻先生の意見は理解出来ないことではない。
綾辻先生は「云われたことを行なった」に過ぎないのだ。

辻「綾辻先生。私が事務所に出入りして監視しているのは、特務課のせめてもの温情なんです。本来ならマシンガンの警備部隊に囲まれ、厳重監視の鉄格子の中に押し込まれていても文句は云えないんですからね？もう少し私に感謝を__」

綾「感謝はしている。君のような扱い易い人材を、監視要員としてつけてくれるている事には」

辻「扱い易いですって！」

辻村さんが持っていた珈琲カップが揺れた。
恐らく、と云うより確実にカップの存在に今気付いたのだろう。
__何ていうか、大変そうだな。

綾「その珈琲、折角淹れたんだから置いたらどうだ」

辻「え…あ、はい」

置かれた珈琲カップを落ち着いた動作で持ち、ゆったりと飲む綾辻先生。
本来こういう状況なら辻村さん側(特務課)なら綾辻先生を叱る筈なのだが…。
__まぁ、辻村さんですから。

綾「ふむ。意外に悪くないじゃないか」

辻「そ…それはどうも」

少し頬を赤くしてそう答える辻村さん。
次の瞬間、辻村さんの目が一気に覚醒した。
そして叫んだ。

辻「誤魔化されませんからね！ああもう…第一、扱い易いって如何いう意味ですか！これでも私、秘密組織のエージェントなんですよ？周りからはミステリアスな女で通ってるんですよ？こんな凄腕エージェントを扱い易いなんて…」

__ナルシストな女では？
…否、口が割けても云わない方が良いか。

綾「此処に来る前、上司に叱られただろう」

辻「えっ」

綾「切り替えるために珈琲店でラテを頼んだ。それから一丁目の細い古書店街のルートを通って此処まで来た」

辻「えっ、えっ」

どんどん戸惑う辻村さんを気にせず、綾辻先生は言い続けた。

綾「この事務所の前で狙撃班と通信した。彼らは監視位置をＤ２に変えて監視し続けると云った。…それから最後に、例の台詞だ。映画の決め台詞。『私と同じ時代に生まれたのが、お前の失敗だ』だったか」