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子供達はめいめいの持つ時間資産を費やすことに全神経を集中していた。

絵本を読むもの、画用紙に絵を描くもの、拳大の軟球を壁に投げつけるもの、太い縒り紐で綾取りをするもの。

一番下は四歳の少女、一番上は九歳の少年だ。

誰も顔を上げない。

「親爺さんに迷惑をかけていないか。
親爺さんはかつて凄腕の軍人だったから、その気になれば文句をたれるお前達五人を一瞬で__」


冗談を言っている途中で気がついた。

子供達は五人の筈だが、目の前にいる子供達は四人しかいない。

右手にある二段寝台の上で、何かが動く気配がした。


私はとっさに腰を落として姿勢を低くした。


寝台の上の闇から敏捷な影が飛び出した。

五人目の少年だった。

私は頭を落として、飛びつこうとしたその影を躱した。


だがその襲撃は囮だった。

絵を描いていた少女が、均衡を崩した私の右足に飛びついた。

最初からそういう手筈だったのだ。

私は片足の自由を失ったまま、次に来る本命の攻撃に構えて足を踏み出した。

だが踏み出せなかった。

つい先程まで綾取りに使われていた縒り紐が、私の足の進行方向に仕掛けられていた。

罠。

思い切り張られた縒り紐が足首に引っかかり、私の躰は着地場所を失ってむなしく宙を泳いだ。


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丸眼鏡

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太宰治


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作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年10月16日 22時

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