51 ページ4
*
それから雨が降り、雨がやんだ。
太宰はミミックの情報を収集して忙しく飛び回り、私は手懸かりを求めて街を彷徨った。
刻一刻と両手から大事なものがこぼれ落ちていくような気がしたが、失われているのが何なのかを見ることはできなかった。
重要なものほど目に見えない。
特に失われる時は。
考える時間が長くなった。
安吾は何故失踪したのか。
安吾とミミックに何らかの繋がりがあることは今や疑いようもない。
だがその繋がりの正体までは判らなかった。
安吾の偽出張の正体も掴めなかった。
明るく清潔な墓地をひとり彷徨う青いゾンビのように、私は存在しない希望を求めて横浜の街を彷徨い続けた。
ただひとつあった推測は、決して誰にも云わなかった。
気が進まなかったからだ。
太宰の頭の中にも同じ推測があったはずだが、太宰も誰にも云わないだろう。
ミミック出現とほぼ同時期の失踪、不在証明を偽造するかのような出張の嘘、金庫の中の拳銃、それを取り返すべく躍起になっていたミミックの狙撃手。
坂口安吾はミミックのスパイだ。
そう考えれば全ての筋は通る。
ミミックがマフィアの内情を探るため、安吾を買収していたので。
私は頭を振った。
そんなはずはない。
もしそうなら安吾は、太宰や首領を騙す凄腕のスパイということになる。
政府諜報員も真っ青の手腕だ。
そんな腕の立つスパイを送り込んでまで、ミミックはマフィアという組織に何を期待するというのか。
*
ラッキーアイテム
丸眼鏡
ラッキーキャラ
太宰治
37人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年10月16日 22時