45 ページ46
*
太宰の言葉について考えてみた。
確かにその通りだ。
あの傘があれだけ濡れていた理由が、安吾の言葉からでは説明がつかない。
「では、真実は」
「私の予想では、あの骨董時計は取引品じゃあない。
"最初から安吾の持ち物だ"。
荷が鞄の奥にあったのは、出張に出掛ける時からそれを鞄に入れていたからだよ。
そして取引には行かず、雨の中誰かと会い三十分ばかり会話してから、残りの時間をつぶして帰った」
「何故、誰かと会ったと思うんだ?」
「安吾のような情報員は、しばしば雨の降っている路上を密会場所に選ぶ事があるんだ。
傘を差して会話していれば顔を隠せるから、誰かに気付かれたり監視カメラに映る事もない。
盗み聞きや盗聴があっても、雨音が声をかき消してくれる。
車内や室内より密談に向いている」
太宰が何を云おうとしているのか、その根源にはどのような意図があるのか、私はもうほとんど判っていた。
だが、何か明るい展望を見出すため、反対尋問をせざるを得なかった。
「確かに安吾は嘘をついていたのかも知れない。
だが、安吾はマフィアの秘密情報を扱う情報員だ。
誰にも明かせぬ密会のひとつやふたつ有るだろう。
責める訳には」
「なら、一言云えばいい。
『云えない』と。
そうすれば私もAも、それ以上仕事内容を詮索したりしない。
そうだろう?」
「………………」
確かに、その通りだった。
*
ラッキーアイテム
包帯
ラッキーキャラ
織田作之助
30人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミュウ=ムー(プロフ) - 教えてくださり、ありがとうございます。 (2018年9月20日 19時) (レス) id: 1429768fb6 (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - オリジナルフラグははずさないといけませんよ。違反行為なので (2018年9月20日 19時) (レス) id: 8d50bc542b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年9月19日 21時