【文スト】太宰治の恋事情

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*


太宰がピンを揺らして一秒もしないうちに、金庫内の歯車が噛み合う硬い音がした。

「はい開いた」


器用な奴だ。

「さて、中身は何かな？」


太宰が金庫の蓋を開き、中を覗き込んだ。

私の位置からもそれが見えた。


＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿。


これは何を意味する？


この金庫は安吾の部屋から発見された。

家具の一部になっていた丸椅子といい、換気口の中に隠されていた事といい、安吾はこの金庫の事を知っていたと考えていい。

素直に考えるなら、この金庫の中身は安吾の所持品だろう。


私は心のどこかで、この金庫の中身が貴重な何かではないかという想像をしていた。

安吾がそれを手に入れ、灰色の襲撃者はそれを奪うために私を襲撃した。


だが違ったようだ。


*


金庫の中にあったのは、"灰色の旧式拳銃だった"。


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