【文スト】太宰治の恋事情

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狙撃には通常、銃を構える狙撃手のほかに、観測手と呼ばれるサポート役が付くことが多い。

観測手は狙撃手と常にペアで行動し、狙撃ポイントの修正やタイミングの指示などを行う。

場合によっては斥候や、接近する敵の排除も担当する。


狙撃手が反撃に転じた時点で予期しておくべきだったのだ。

敵は二人組だ。


二人目の敵が銃を撃つ。

狙撃銃ではなく、旧式の拳銃だ。

私は手近にあった塵袋を放り投げて即席の煙幕とし、壁に向かって乱暴に撃った。

跳弾を弾幕代わりにしようとしたのだ。


効果を確かめる間もなく、ナイフの男が接近してきた。


ナイフと拳銃が噛み合って火花を散らした。

トリガーガードの付け根の金属がナイフに削られて悲鳴をあげる。


私は相手の踝のあたりに足払いをかけた。

相手はバランスを崩して片手をついた。


ほとんど反射的に金庫を投げ捨て、もう一方の拳銃を抜いた。

私は両利きで、左右二挺の拳銃を持ち歩いている。

無意識に近い動作で銃を相手の目の前につきつけた。

ほんの鼻先に。

この距離なら外しようがない。


そこで撃てば、相手は何か意味のあることを考えるよりも早く即死していただろう。

痛みを感じる暇さえない。

彼の脳と意識は路地裏の壁の染みになり、彼の人生は手品のようにぱっと消える。


私は撃たなかった。

ただ転がって距離をとり、二挺の拳銃と二人の敵を視界に収めて立ち上がった。

「A！
屈め！」


太宰の声がしたのはその時だった。


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