16 ページ17
*
私はその紙片を受け取った。
この紙片は謂わば権限委譲書だ。
通称『銀の託宣』と呼ばれるこの紙片の所持者の発言は首領の発言に等しく、紙片を見せて指示すれば、五大幹部以下の人間は断る事ができない。
断れば組織への背信と見做され処刑される。
その伝説の書き付けを自分が持っているという事実に、何か信じがたい非現実感を感じてしまう。
「それがあれば幹部でも顎で使える」
首領はにっこりと笑った。
「そう云えば、君は幹部の太宰君と個人的な友人なのだったね。
立場を超えた友情と云う訳だ。
彼は優秀な男だから、困ったら頼るといい」
『友人』『友情』と云う言葉が出て多少胸がちくっとしたが私は答えた。
「その心算はありません」
本当のことだった。
「そうかね?
歴代最年少幹部の肩書きは伊達や酔狂では手に入らない。
組織の同僚からは異端児扱いだが、私は太宰君の実力は飛び抜けていると思う。
あと四、五年もすれば、私を殺して首領の椅子に座っているだろうね」
首領は悪戯めいた笑みを浮かべた。
私は表情を変えなかったが、内心は足が浮き上がるほど驚いた。
それから首領の顔を見た。
稚気ともとれる、そのにこにこした表情からは、首領の真意は読み取れない。
冗談の一種だろうか。
「善き便りを期待しているよ」
首領が羽根ペンをスタンドに戻した音を合図に、私は一礼して扉の方へ向かった。
奇妙に喉が渇いた。
*
ラッキーアイテム
包帯
ラッキーキャラ
織田作之助
30人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミュウ=ムー(プロフ) - 教えてくださり、ありがとうございます。 (2018年9月20日 19時) (レス) id: 1429768fb6 (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - オリジナルフラグははずさないといけませんよ。違反行為なので (2018年9月20日 19時) (レス) id: 8d50bc542b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年9月19日 21時