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*


「御指示に従い参上しました。
ご用件は」


首領は笑顔のまま私を見詰め続けた。

手助けを求める目だ。

私に求められても困る。

「召集の用件は何でしょう、首領」

「えっと……」


首領は部屋の中にある机、天井の照明、窓、油絵、白金燭台などを見回した後、隣の幼女を見て云った。

「何だっけ?」

「しらない」


エリスと呼ばれた幼女は道端の吐瀉物を見るような目付きで首領を睨んだ後、隣室の扉を開いて去っていった。

私は首領の次の言葉を待った。


首領はきょろきょろと室内を見回した後、中央の執務机の背後に回り込み、手元のスイッチを押した。

街を一望する窓硝子が通電遮光されて灰色の壁面となったので、部屋は急に薄暗くなった。

首領が黒革張りの執務椅子に腰掛けると、音もなく警護の近衛兵が二人、部屋のどこからともなく現れ首領の背後について立った。

マホガニー製の机の上にある机上灯の投げる灯火に横顔を照らし出された首領は、目を細め、眉を寄せ、机に両肘をついて顔の前で手を組んで、低くよく響く声で云った。

「__却説」

「はい」

「織田君。
君を呼んだのは他でもない」

薄暗い執務室で首領は鋭い視線を私に向けた。

「はい」

「……織田君」

少し間をおいてから、首領は云った。

「君は他人から、『もっと突っ込め』と云われた事は無いかね」


何故判ったのだろう。

「よく有ります」


理由を求めて、首領の背後に控える警護の黒服を見た。

直立不動で無表情の同僚は、視線をそっと逸らした。

「兎に角、君はたった今此処に来た。
何も見ていない。
善いね?」

「はい」

私は頷いた。

実際にたった今来たばかりなのだから、当然だ。

「私はたった今此処に来ました。
首領には、幼女を脱がせて追い回しているのを中断し、私の対応をして頂きました。
有り難うございます。
ご用件は何でしょう」


首領は眉間を指でしばらくつまんで考え込んだ後、何かに納得したように頷いた。

「……嘗て幹部の太宰君が云っていたな。
『Aは他意と云うものが存在しない女で、慣れるまでは大変だけど、慣れると寧ろ癒やされる』と……今少し意味が判った」


そのような話は初めて聞いた。

太宰の事だ、適当な事を云ったのだろう。

二十歳も超えた女が他人を癒やせる筈がない。


*

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包帯

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織田作之助


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ミュウ=ムー(プロフ) - 教えてくださり、ありがとうございます。 (2018年9月20日 19時) (レス) id: 1429768fb6 (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - オリジナルフラグははずさないといけませんよ。違反行為なので (2018年9月20日 19時) (レス) id: 8d50bc542b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年9月19日 21時

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