31、愛しき人はもういない ページ31
××
どうしてこうなったのだろうかと僕はまだわからなかった。昔から警察官に憧れていた。警察官になりたかった。ただ、それだけだったのに。
それが今では取り調べを受ける側まで落ちてしまった。嘗ての上司を見て、思わず涙が溢れそうになる。
「山際さん。相手は本気です!」
山際さんは賢い人だった。
知性があって、優しくて、賢くて。
僕よりもずっと凄い人だった。
「ではこちらも本気になるだけよ。
馴染みの検察に渡りをつけたわ。後は証拠を渡すだけ」
彼女がこう云うことは最初からわかっていた。
僕は腰から拳銃を引き抜き、山際さんに銃口を向ける。
「銃を降ろしなさい。貴方に私は撃てない!」
「……その通りだ。僕には撃てない。だから」
───脅し方を変える。
銃口を自分の頭に押し付ける。
その時、山際さんが初めて動揺を見せた。
銃声が響く。
彼女が、ゆっくりと倒れていく。
「───」
嗚呼、どうして。どうして。
最後の最期まで、どうして貴女はそんなにも優しいのですか。
「ねぇ、杉本くん。彼女の最後の台詞を中ててみせようか」
「ごめんなさい」
堪えていたはずの涙がついに溢れ出す。
ごめんなさい、山際さん。
謝罪すべきは、僕の方だったというのに。
***
明かされた真実はあまりに悲しく、残酷なものだった。杉本巡査の涙が脳に焼きついて離れない。
箕浦刑事に実力を認められ、江戸川先輩はウキウキと先頭を歩いている。すごいですよね乱歩さんの能力、と中島先輩が感嘆の息を吐く。
「ああ、実はね。乱歩さんは異能力ではないのだよ。彼自身は異能を使っている心算みたいだけれど」
「へっ！？」
衝撃の事実に中島先輩は目を丸くする。
声には出さなかったものの頭を鈍器で殴られた時のような、そんな衝撃が私にも走った。あの超人的な頭脳が異能力によるものではなかった、なんて。
「でもこれで分かっただろう？
乱歩さんのあの態度を、探偵社の誰も咎めない理由が」
私は江戸川先輩の背中を見つめる。
事実、私も江戸川先輩の頭脳に尊敬の念を抱いた。彼は振り向く。夕焼けに照らされ江戸川先輩の髪はキラキラと輝く。
「ねえ、今から四人で焼肉食べに行かない？」
「焼肉……！僕、人生初の焼肉です。楽しみだね、Aちゃん」
「はい！」
「あのー……乱歩さん……」
「勿論、太宰の奢りで！」
太宰先輩の悲鳴が夕方のヨコハマの街に木霊した。
**
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黒灰白有無％(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです！！賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます！！ (9月8日 3時) (
レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←？ - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます！！七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
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