検索窓
今日:6 hit、昨日:4 hit、合計:99,479 hit

§10 ページ10

――――今も同じくらい好きか、と言われたら、それは違う。


 恋心がわかっていなかったあの頃と比べてだいぶマシになった今は、昔よりももっと今の方が好きだという気持ちが大きいることがわかる。


 あれから八年――――出会ってから九年もの時間が経って、Aはかつての面影も残っていないくらいに綺麗になっていた。


 だと言うのに、鳴に対しての気持ちだけは変わっていなかった。一人でベンチで項垂れる姿が、教室で半泣きで相談してきていた姿と被って見えて。


 あの時は叶わないと思ったけど、今なら叶いそうだと、思ってしまって。


「お前の気持ちはわかるけどよ」


 小さく溜め息を吐きながら言う倉持。もうきっと誤魔化す必要はない。誤魔化したところで、意味もない。


「…………まあ、やっちまったとは思ってる」


 後悔なんかはしてねーけど、と続ければ、意外にも倉持は「そうだろうな」と返してきて。てっきり咎めの一つや二つ言われるだろうと思ったのに。


「今のお前、すっきりしたって顔してるしな」

「……マジ?」

「…………自覚なしかよ」


 全部顔に出てる、と倉持は言うが、それがわかるのはやっぱりこいつならではだなと思う。だからこそ、隠し事はしにくいが、こういった相談やら踏み込んだ話はしやすい。


「んで、返事はなんて言われたんだよ?」


 返事、とは。…………恐らく倉持は、俺がAに想いを伝えたと思っている。いや、そういう行為をしてしまったのだからそう思うのは当たり前なのだが。


 しかし、想いを伝えたのかと訊かれたらそれは否定するしかなく。さらに言えば、それを匂わせるようなことは言ったのかと訊かれれば、それも否定するしかなく。じゃあ何を言ったのかと訊かれれば――――――


「……何も言ってねーよ」

「……お前な……」


 流石に呆れ顔をしてみせた倉持に、こればっかりは反省する。酔ってる勢いで抱いた上に、相手は、まあその、そういう行為をすることは初めてだったのだ。


 とはいっても、あの後の感じを思い返してみれば、決して俺に対しての嫌悪感や後ろめたさを抱えてはいなさそうだった。……と、思う。

§11→←§9



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (182 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
312人がお気に入り
設定タグ:ダイヤのA , 御幸一也
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

shinox2(プロフ) - 無事に終わって良かったです(^-^) (2019年1月4日 19時) (レス) id: c23d485c4b (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - あおいさん» 返信遅くなって申し訳ありません。応援ありがとうございます、すごく嬉しいです。これからも少しずつ更新を続けていきますので、どうか完結までお付き合いください。 (2018年9月3日 23時) (レス) id: beb33fecd4 (このIDを非表示/違反報告)
あおい(プロフ) - いつも更新するのを楽しみにしつつ読んでいます!大変かもしれないですが、応援しています☆ (2018年8月19日 23時) (レス) id: 590107ddb0 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - ますみさん» はじめまして。応援ありがとうございます!がんばらせていただきます!!〜 (2018年8月19日 19時) (レス) id: beb33fecd4 (このIDを非表示/違反報告)
ますみ(プロフ) - はじめまして。御幸とヒロインの関係を読んでいていいなと思いました!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年8月11日 9時) (レス) id: b7489a665b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みりん | 作成日時:2018年4月15日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。