48話 ページ1
.
目が覚めると、隣に佐野くんがいて気持ちよさそうに寝ていた。小さい子供のようなあどけない寝顔が可愛くてつい見入ってしまう。指先でほっぺたをぷにぷに触ると、ん〜と寝ぼけた声が聞こえる。
その声に笑みがこぼれる
昨日はあれから散々キスした後、お互い眠くなってきてもう寝ようとなった。私のベッドに佐野くんも当たり前のように入ってこようとした時、あ!と言いながら着替えを入れていた鞄から使い古したタオルを持ってきた。それは何?と聞くとこれがないと寝れないと言うからあまりにも可愛いくて笑ってしまったら笑うなと唇を尖らせていた。
別にバカにしたわけではなく、人一倍わがままな性格の佐野くんだけど、いつも無敵のような立ち振る舞いで時折見せる大人の表情にドキッとさせられることが多いのに、自分の弱さを見せてくれたような気がして、嬉しくて愛おしくて幸せでいっぱいになったのだ
昨夜のことを思い出しながらベッド横の目覚まし時計を見ると朝6時を指していた
「はっ!学校!!佐野くん、もう6時だよ!学校あるから起きなきゃ」
幸せゆえに休日と脳が勘違いしていたが、まだ火曜日である
慌てて隣で寝ている佐野くんの体を揺らして起こす
全然起きない…どうしよう
「佐野くーん…」
「……………」
佐野くんを置いて自分だけ学校へ行ってもいいんだが生憎それができない状況である。寝る前にしっかり握られていた使い古したタオルは佐野くんの手から離れており、いつの間にか私の服の裾を握っていた。
しかもかなり強い力で
学校を休むと、両親が海外から帰ってきた時にひどく心配して仕事を休もうとするから極力休みたくない。どうしたものかと考えていたら、佐野くんが身を捩って上半身だけ起こしている私の腰に腕を回してきた。
「佐野くん起きた?」
「…起きてない」
「起きてるじゃん」
くすりと笑って佐野くんの髪を梳かすように頭を撫でる。ふわふわで柔らかい。
「学校行かなきゃだから起きて〜」
「今日は休もう」
「だめ」
「やだ」
終わりが見えない押し問答を繰り広げていたが、じゃあ今日も泊まると言う佐野くんの言い分を呑んで学校へ行けることなった
「佐野くんもちゃんと学校行ってね」
「給食は食べなきゃだからな」
一緒に家を出ると、佐野くんはバイクに跨りまだ眠そうな顔で帰って行った。
その日、佐野くんは泊まりに来なかった。
これから始まる大きな抗争の火種が生まれたから
250人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ミルクレープ | 作成日時:2021年6月17日 0時