Distance makes the heart grow fonder

♯30 ページ31

「6年前の夏、誰にも知られずに貴方のお兄さんと会っていたのは本当です 太輔は執事さんに、俺は家族に言ってなかったので…」
「あれ、誰にも知られてないってことはないでしょう？ 兄には連れがいたんじゃないですか？」
「あっ…そうですね、シェリは知ってました」

いつも太輔と一緒に居た賢いグレートピレニーズを思い出して答えると友輔さんがほっとしたように呟いた

「なるほど、確かに貴方は兄の【幻の宏光】のようですね あった時期も一致してますし、シェリの名前も知っていた」
「！………」

鎌をかけられていたのか…まさか自分が誰かから警戒される対象になるなて思わず、絶句してしまう
友輔さんは申し訳なさそうに

「兄の探していた【宏光】の姿は本人も知らないですし、更に貴方を疑う気が毛頭ないので、第三者として私から確認させて頂きました お気を悪くされないでください」
「…いえ、気を悪くはしてません 俺が太輔と会っていたことを証明出来るものはもうないですし、お互いちゃんと顔を知らなかったのに再会出来たなんて信じにくい話ですよね…怪しまれるのも当然です」

藤ヶ谷財閥がとてつもなく世界経済にも影響力のある家柄であることはわかっている

「いい人ですね宏光さんは 流石兄が気に入っただけのことはあります」

なんて答えていいか分からず目を伏せる
この口ぶりで友輔さんは俺が太輔の恋人だと知らされている
その割に落ち着き払ってる気がするな
するとその疑問を分かってるかのように本人から告げられた

「兄から聞いてるかと思いますが、うちの一族は恋人の性別にこだわりがない人が多いんです まあ世間からそれなりに注目されてる家ですので、大っぴらにはしていませんが、秘密の【恋人】である分には個人の自由です 同性なら落胤の心配もありませんし、結婚前のお相手としては返って望ましいくらいです……意味を汲んでいただけますか？」

俺達が恋人同士でも気にしないという言葉の裏には含みがある…そして察した

「…周りに気づかれないようにします 太輔の結婚の邪魔はしません」
「お見事です」

褒めることで俺の答えが合ってると伝える
流石太輔の実弟、釘の刺し方がソフトだけどしっかりしている
そのまま車はホテルの敷地内に入り、車寄せに停車

「宏光さんが理解の早い人で安心しました 兄は藤ヶ谷家を背負って立つべき人間です 既に相応しいお相手が何人か候補に挙がっているので、どうか先程の言葉を忘れないで下さい」
「はい」

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