Distance makes the heart grow fonder

♯14 ページ15

目を見開き息を飲むその反応で確信を得た彼が、口調を強める
「やっぱりあの時の宏光だね」
「ち、違いま...」
「君の下の名前は？」
「...宏光ですけどあの時の宏光では...」
「いや君だ！」

反射的に嘘で逃げようとしたが、言葉が出てこずおろおろと目線をさ迷わす俺に確認ではなく、断言される
「６年前毎日会っていた宏光だ」

どうしようもう逃げられない
６年前再会の約束をせず行方をくらました俺に対し、責められるのを覚悟して僅かな頷き
「...はい」

過去について何か言われると覚悟していたが、″やっぱり″という安堵した声が聞こえた直後、身体に何かが巻き付き壁にぶつかる
え？何が起きた…

目の前には上質な黒のスーツと白のドレスシャツ
太輔に抱きすくめられていた
(な、なんで？一体どうしたら)

すっぽりと抱きすくめられ、彼の懐かしい匂いを嗅いだ途端、再び鼓動が速くなる
動けずにいる頭上で吐息混じりの耳心地いい声

「はぁ...やっと見つけた...会いたかったよ宏光 やっと願いが叶った」
情感のこもった声に彼が再会出来たことを心から喜んでいることがわかり、嬉しい反応に震えながらも口を開いた

「...あの...どうしておわかりになったんですか？」
すると腕の力が少し緩み、顔を覗き込んでくすりと笑う
「僕は宏光の声が好きだって言ったよね」
「え？声だけで...？」
そうだよと答え再び抱きしめられる

「バルコニーであった時暗がりにいた宏光の顔が見えなくて、声を聞いた途端６年前の声とシンクロしたんだ」
信じられない...まさか声だけで

「その後話をして話し方や抑揚も一緒だったし、念のため顔も触らせてもらって確信に変わったんだ」
「.....」
「相変わらず宏光の肌は赤ちゃんみたいにすべすべで触り心地がよかったし、僕の手が覚えていたよ」

６年前視覚が遮断された状態だったにも関わらず、俺を見つけた
そして今度は逃げられないよう咄嗟にホテルスタッフに指示を出して、ホテルに留まるようにしたらしい

黒曜石の瞳が俺を映し

「本当に会いたかった ずっと探していたんだ あの時は目が治るか分からなかったから告げなかったけど君が好きだった…いや、今も好きだ あの６年前からずっと君に恋してたんだ」
「...っ嘘 そんなわけ...」
「僕の気持ちを否定しないで！宏光大好きだ 6年もかかったけどこうして再び宏光を見つけられてとても嬉しいよ はは...手が震えるくらい舞い上がってる」

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