Distance makes the heart grow fonder

♯13 ページ14

多分挨拶に見えたのだろう

下着をつけてないローブ姿で人前に出るのは落ち着かないが、放っておくことも出来ずエントランスホールに向かう

「.....はい...」
おずおずとドアを開けたその先、長身の人物に気付き固まった
(太輔！？)

「さっきの失礼をお詫びに来ました 入ってもいいですか？」

じーっと見つめられ咄嗟に目線を逸らした
心臓がバクバクしながらも冷静に考える
太輔はこのホテルの最高責任者だからここへ来たんだ
6年前の俺の顔を知らないから、同一人物だとは気づかれることは無い
下手に動揺していると怪しまれる

「...どうぞお入りください」
ふーっと静かに息を吐きドアを大きく開け彼を招き入れる

緊張しつつも先を歩きリビングへと案内する
背中に強い視線を感じるのは気の所為か

「お茶でも入れますね」
スイートルームにはキッチンも完備されてるので、そちらへ向かいつつ話すと

「いや失礼をお詫びにきたので、気を使わないでください」
「でも...」
「それより謝らせてください」
振り返らないわけにもいかず、目を伏せ振り返れば黒の革靴が目に入り、思い掛けず近くにいるのが分かった

俯いたままいると更に当社のロゴが入った紙袋が入り込んできた
なんで？

「さっきは本当に申し訳ない クリーニング業者に確認したところワインの染みは綺麗に落とせる事がわかったのですが、明日貴方は仕事ですよね？ 一旦帰宅して着替えて行くよりここから出勤した方が楽だと思い、せめてもの償いで着替えを用意しました 許して頂けるなら受け取ってくださいませんか」

許して頂けるならって最初から怒ってた訳じゃないし、ここから出社出来れば俺も助かる

「ありがとうございます...」
遠慮がちに受け取ると明らかに安堵した彼の声が

「良かった凄く怒っていたらどうしようかと心配してました」
「そんな！こんなに素敵なお部屋に泊めていただけるだけでも十分ですのに...」

顔を上げ頭を振ると
「やっと顔を上げてくれた」
「あっ...す、すいません」
動揺していたとはいえ、俯いて相手と目線を合わせなかった失礼を自覚したが、再び頭を下げようとした所に彼の優しい手が俺の頬にかかり止められた

「謝るのは僕の方です いつもならこんな無計画な行動はしないのにどうしても貴方を逃すわけにはいかなくて無茶をしてしまった.........宏光」
「.........！」

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