88話 ページ42
服の色以外で赤く染まったぶるーくさんは、静かな表情で、倒れたメイドに向かって数秒目を閉じた。目を開いて、赤に塗れた剣を持ったまま寝室へ。
バタン、と扉が閉じる音がして、再び部屋は静かになった。誰も、動かなかった。
彼の周りの世話をしているというメイドは腰を抜かしたように座り込んで、呆然としていた。
座り込んでこそいなかったが、同じように呆然として立ち尽くしていたリリーさんが、ハッとしたように青ざめた顔で倒れたメイドへと駆け寄って、「アニス!!アニス、大丈夫!?」と叫びながらゆすった。
反応は、当然ない。_____死んでいる。
「_____お嬢様」
アニス、アニス、とメイドの名前を呼びながら涙を流す彼女に、そっとソールさんが近づいて、その体を抱き上げた。
「ソール、どうしよう、また、また私、間違えて、私が、私の、」
「お嬢様のせいやない。お嬢様のせいやないよ。大丈夫や、大丈夫_____」
そのまま廊下の方へと連れて行く。すれ違い様に、小さく目配せされたので、頷いた。バタンと扉が閉じて、リリーさんの泣き声も小さくなる。
「あ、アニス_______」
「全員その場から動かないでください」
ようやく動き出したメイドさんたちに鋭く言う。動いてはまずい理由があった。
「な、何故?」
「毒です」
短く言う。メイドたちが息を呑んだ。
「この城で、こういった事態に対応しているのは誰ですか?」
「……い、医者は……きりやん様、だけれど……あの方は……」
「では、きんとき様ですね」
雑務室へ向かう扉を開けて、きんときさんに知らせるように言う。すぐに反応した1人が、駆け出していった。
「銀食器を使っていたのに……」
「最近は、銀に反応しない毒も多いです。今回の場合は、おそらくこの茸かと。食べられるものと非常に似ていますが、少しだけサイズが大きいんです」
植物のプロですら間違えることがあるという非常に危険な茸だ。下手に触らない方がいいなと判断して、代わりに転がった遺体に目を向ける。見開かれた目が恐怖に歪んでいるのが可哀想だったが、目を閉じてあげることはできない。
頭を下げて、小さく黙祷を捧げる。
「_____貴女、一体何者……?」
困惑した声を上げるメイドさんに返す。
「ただの新人のメイドですよ」
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すみれ - 続編おめでとうございます!この作品とても好きです! (2022年10月23日 21時) (レス) @page2 id: a70cb7c9e5 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あの、ちょいちょき面白くてクスッと笑ってしまう所がありとても好きなお話です。これから続きを読んできます! (2022年7月19日 21時) (レス) @page50 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
まほ(プロフ) - めっちゃこの小説が大好きで、この小説を読むでいる時間が一番幸せです(^-^)これからもよろしくお願いします (2021年9月16日 16時) (レス) id: dab527b906 (このIDを非表示/違反報告)
サンセットマリン - スカ一さん» はい、大丈夫です。よろしくお願いいたします。 (2021年9月16日 6時) (レス) id: 58697e3d5e (このIDを非表示/違反報告)
スカ一(プロフ) - サンセットマリンさん» おはようございます、お世話になっております。ご了承頂きありがとうございます。では、今回の件はこれにて終了とさせて頂きたく思います。また、作者名、作品名を伏せて事の経緯の説明を当方の作品内でさせて頂いてもよろしいでしょうか? (2021年9月16日 6時) (レス) id: c3f5308968 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サンセットマリン | 作成日時:2021年9月7日 18時