黒い狂い ページ8
あの一戦で、みんな変わった。
俺は守りたいものを守れるよう、強く。
六月はもう恐れずに勇敢に。
米林は訓練も真面目に取り組み協調的に。
佐々木は別人のように冷酷非道に。
そして、Aは__
「……っ、A」
「おはようございます、瓜江一等捜査官」
かなしいひとに、なってしまった。
「(なんなんだ、その貼り付けたような胡散臭い笑顔は)」
前も常に笑顔だったけど、
もっと柔らかく無邪気なものだったのに。
「(なんなんだその呼び方は)」
前は 瓜江くん やら ウリ坊 やら くっきー だった。もう怒らないから呼んでもいいのに。
「(なんだよそのかなしい瞳は)」
前はもっと、こんなに黒くなかったのに。
「(なんで、壁をつくるんだ)」
お前を、助けたいのに。
…でも
「_貴方もそうやって、」
「"前の方が良かった"。
そう仰るんですか?」
こうしてしまったのは、俺のせいだ。
_お前の…っ、お前のせいだ……!
後から聞いた話。
上官からの命令で彼女は
SSレート級喰種、ノロとの対戦中に抜けた。
その矢先に見たものは、幼き頃から親しかった伊丙入上等捜査官の死。
それを聞いたとき、頭が真っ黒になった。
_お前がもっと早く来てたら…っ。
_お前のせいだッッツ!!!
___…私の、せいだ。
後悔してもしきれなかった。
しきれる筈がなかった。
「では、失礼します」
「ま、待ってくれッ!」
咄嗟に、横を通り過ぎようとした彼女の腕を掴んだ。
昔よりも随分細くて、喉の奥が詰まった。
「何でしょうか」
「…っ、あの時は、本当にすまなかっ_」
「結構です」
強く目を瞑り、頭を下げようとした俺を
Aは遮った。
「え…?」
「あの時言われた言葉は全て事実です」
「貴方は何も悪くありません」
「私が弱いのが悪かったんです」
「私のせいです」
「私が、もっと、強かったら__」
その目を見て、体が震えた。
瞳の奥には、果てしない、闇、絶望、失望、虚無。
あまりに深すぎて気が狂いそうな程クロかった。
「…そ、んな、こと…」
ここで繋止めて置かなければ、
何処かに行ってしまう。
頭では簡単なくらいに分かっていたのに。
「では、さようなら」
今度はもう、腕を掴めなかった。
「(叶うことならば
どうかもう一度、笑ってくれ)」
(俺たちは何処で道を過ったのだろうか)
170人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鏡華(プロフ) - 更新待ってます! (2019年8月1日 18時) (レス) id: 529e6aac76 (このIDを非表示/違反報告)
ほのぼの(プロフ) - 面白かったです!更新再開楽しみにしています。 (2018年11月6日 1時) (レス) id: d6d9a7169d (このIDを非表示/違反報告)
糸こんにゃく(プロフ) - 面白かったです 作者様がこの作品のことを忘れてないことを願います (2018年9月24日 7時) (レス) id: 0a0cb51868 (このIDを非表示/違反報告)
イゼッタ(プロフ) - 好きです更新してくださいm(_ _)m (2018年8月20日 4時) (レス) id: 1f346eff48 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきだるま(プロフ) - この作品好きです!更新頑張ってください! (2018年7月13日 22時) (レス) id: 475c11c433 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:透夏 | 作成日時:2018年7月1日 17時