7.伊之助のわくわく ページ7
時を遡ること数分前。
図体がテガくなった鬼に頚椎を握りつぶされそうになっていたとき、ソイツは現れた。
鬼の左腕が切り落とされ、そこに握られていた伊之助は地面に叩き落とされる。
「ギャウ!」っと声を上げた鬼はソイツを振り向く。
見ると、左右で色合いも柄も違う羽織を来た奴もこっちを振り返った。
何だ?
斬ったのか?
アイツが?
メキメキと斬られた腕を再生した鬼が手を伸ばして飛びかかる。
速ェッ…アイツやられちまうぞ!!
そう思った矢先───
「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮」
呼吸で技を繰り出したソイツによってばらっと鬼の体が崩れ落ちた。
俺は肩で息をしながらそれに見とれる。
すげぇ!
相手の強さに気分が高まっていくのがわかった。
格が違う。
一太刀の威力が違う。
天地ほど差がある。
あの硬い化け物を豆腐みたいに斬っちまった。
すげぇ!すげぇ!!すげぇ!!!
何だコイツ!!
わくわくが止まらねぇぞ!オイ!!
名前は知らねぇけどすげぇ!あの男すげぇ!
「オイ!半半羽織!」
起き上がって叫んだとき、それに被せて女の声が響く。
「義勇!」
振り向いた半半羽織が「琴音の方か」と一言喋った。
「そうそう、琴音の方ですよ」
にこっと笑う女。
誰だてめェ?
女は引っ込んでろ!と考えている伊之助を他所に目の前の二人の会話が進んでいく。
「琴音」
「何かしら?」
「お前、水柱になれ」
「もう、またその話なの?」
「…。」
「何度も言ってますけど、私は柱にはなれないんです。というか、“ふさわしくない”と言う意味では義勇と条件は同じよ。…それに同期なら貴方も私のこと分かってるでしょう?」
俺を無視して繰り広げられる会話に段々と腹が立ってきた。
「オイ!お前ら!!俺を無視すんじゃねぇ!!」
叫ぶと女の方が振り返った。
「あら?貴方は…?猪のお顔は被り物かしら?」
「お前に用はねぇ!オイ!そこの半半羽織!俺と戦え!!」
指をさしてソイツと向かい合う。
「…。」
「あの十二鬼月にお前は勝った!そのお前に俺が勝つ。そうすれば一番強いってのは俺って寸法だ!」
ばっと両手をクロスさせて今度は親指で自信を指し示した。
なのに表情一つ変えずにソイツが口を開く。
「修行し直せ。戯け者」
気に喰わねぇ顔で言われた言葉にブチッと頭に血がのぼる。
「なにィィィ!!」
「ふふふっ。威勢のいい男の子ね!」
しかも、隣の女がクスクス笑いやがるのが余計腹立つ。
77人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月見(プロフ) - おしゅらさん» ありがとうございます!ゆっくりとマイペースで更新頑張りますね(*^^*) (2021年10月13日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
おしゅら - ゆっくりで構いませんよ(*´ー`*)気長に待っていますので月見さんのペースで更新なさってください(^^) (2021年10月13日 18時) (レス) id: 2609acdfa8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見 | 作成日時:2021年9月12日 12時