六 ページ6
途端、視界の隅に太宰さんの指が映る。細く、角張って、其れでいてしなやかな手が、ゆるりと伸ばされて、近づき、私の不恰好な手首を掴もうとしていた。
頭の奥で危険信号がふっと通り過ぎる。
――――――だめ!
―――パシッ
私は反射的に其の手を振り払った。
気づけば、振り払う為に挙げられた其の手が、わなわなと震えていた。
「は、はは、太宰さん、駄目ですよ、触っちゃ。未だ巻いたばっかりで、…掴んだら崩れちゃいます」
「…そうかい。然し非道いねぇ。何も思い切り振り払うことないじゃ無いか。
…まあ、“君の肌に触れて仕舞えば”、手だろうと何処だろうと問題は無いのだけれど」
「…もう、太宰さんは私を困らせたいんですか?折角与謝野先生に綺麗にして貰ったのに」
「真逆―――!寧ろねぇ、A、君の為を思ってやろうとして居るのだよ。君は別に、今は包帯何て如何でもいいんだろう?私に『無痛』の異能を無効化してほしく無いだけだ」
私は太宰さんの顔を見なかった。唯彼の足下にできる薄い灰色の影を見ていた。今の私は、それが精一杯。
私は下を見た儘静かに、口から言葉を零した。
「…だったら触らないでくださいよ。や、です、…痛いのは」
105人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蓮ノ花 - 江羅古九さん、感想ありがとうございます!^_^はい、絵は自分で描きました!女の子の描き方ーみたいな本読みまくって描いた成果が出てたら良いんですけど笑笑 (2019年5月4日 21時) (レス) id: d96b011022 (このIDを非表示/違反報告)
江羅古九 - 文章の感じもそうですけど、絵が凄く上手いですね!!ご自分で書かれているんですか!? (2019年5月4日 21時) (レス) id: 651ad92b57 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蓮ノ花 | 作成日時:2019年4月14日 2時