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「またって云っても、何時もの事じゃないですか」
へらりと力無い笑いが口から零れる。私が包帯でぐるぐる巻きになっている事。大抵私が怪我を負って来ることも。
当たり前だった。
一体今更何を云って居るのだろう。
―――私の異能、『無痛』。
其の名の通り、痛みを感じないというものだ。役に立つのか立たないのかさっぱりわからない、謂わば我楽多に近い能力。其の所為か、私は怪我に気づかないことが多々ある。何時の間にか、血が出ていた、という事が頻繁にあって。
其れは今に始まった事じゃない。入社当初からこうだった。太宰さんだってとうに知って居るはずだ。其れなのに、太宰さんは、否、彼だけじゃ無い。
「何時ものこと?嗚呼そう君の其の状態が?私には悪化しているようにしか見え無いけれど」
「…そう云ったって、仕方がないですよ。私は平気です」
「平気、ねぇ」
太宰さんは盛大に溜息をついて、私にずかずかと歩み寄る。うすらと細めた鷲色の目が私を覗き込んだ。其の目は私を呆れたように一瞥して、微かに眉間に皺を寄せた。私は特にいう言葉も無い儘、唯自分の真っ白な手を見詰めた。蛇に睨め付けられた蛙の様な空恐ろしい気分で、思わず下唇を軽く噛んだ。
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蓮ノ花 - 江羅古九さん、感想ありがとうございます!^_^はい、絵は自分で描きました!女の子の描き方ーみたいな本読みまくって描いた成果が出てたら良いんですけど笑笑 (2019年5月4日 21時) (レス) id: d96b011022 (このIDを非表示/違反報告)
江羅古九 - 文章の感じもそうですけど、絵が凄く上手いですね!!ご自分で書かれているんですか!? (2019年5月4日 21時) (レス) id: 651ad92b57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮ノ花 | 作成日時:2019年4月14日 2時