術式展開 ページ8
A side.
俺はすぐさま夏油傑に駆け寄った。
酷くツンとくる血の匂い。触れてみると、既に冷たくなった身体。
病院なんてもう遅い。
魂が、刻々と消えかかっているのが見えた。
どうすれば助けることができる?
俺にできることはなんだ?何か、何かあるはず………
ッ……思い出せ……思い出すんだ……
……取り乱すな。冷静になれ。
焦ることはかえってよくない。考えろ。
……そういえば、アレを使えばもしかしたら。
いちいち迷っていられない。
上手くいくよう願い、傑の体に触れてこう言った。
『__術式展開__無為、転変』
初めて使う術式に少し躊躇う。
ツギハギだらけの人型の呪霊が持っていた、術式。
思い出したくもない、過去一最低な呪い。
無為転変は、触れた対象の魂に触れて生物の肉体を自由に変形させる術式。
仕組みはとっくの昔に理解していた。
お願いだ。あの時みたいには…ならないでくれ……!!
『死ぬなよ、傑……っ!』
届きもしない言葉を呟く。
消えかかっている魂を、修復する。
あの時みたいな悲惨な死体にならないように、肉体の形に添って魂の形を少しずつ変えていく。
心臓、右腕、皮膚。
見る見るうちに再生していき、目の前で寝ている傑の見た目は完全に元通りになった。
心臓は……ちゃんと動いてる……良かった
思わず力が抜け、安心してほっと胸を撫で下ろす。
後は傑を起こしてどこかに移動しよう。流石に190前後の筋肉マンを背負って歩く力は持ち合わせていない。
『傑……起き、てっ……?は……ッ!?!?』
起きてと声をかけ驚愕の声をあげたのは、傑からの返事がなかったからではない。
傑の魂が無かった。
俺は無為転変の術式のせいか、魂の形を知覚している。
傑の魂も見ることができるはずだった。
だが、魂が存在しない。これはもう、死体だった。
心臓は動いているのに、体温も温かいのに。
死んでいるのは………
これは、
―――――――――――脳死。
脳の機能が全滅している状態。
回復する可能性はなく、元に戻ることもない。
やがては心臓も停まる。
……間に合わなかった。助けられなかった。
『………………終わりだ…っ』
まだ止まらない涙を目から流しながら。
絶望のどん底に突き落とされたような感覚だった。
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こなた(プロフ) - 望さん» ハァア……ッ!!!!とても熱烈なコメントありがとうございます〜!書く時の励みになります……早くお話をお届けできるよう頑張りますね!! (2021年5月5日 10時) (レス) id: 8db0300427 (このIDを非表示/違反報告)
望(プロフ) - 夢主くんの夏油傑しか勝たんとまでは行かないけど……全部引っくるめてサマーオイルが好き!!!!アッ…ニセハオコトワリデス!!!! (2021年5月4日 10時) (レス) id: 64f1bce536 (このIDを非表示/違反報告)
望(プロフ) - あ…ヤバ…気付かないで何周かしてた…(汗)面白さは初見と変わらん…だと!? (2021年5月4日 10時) (レス) id: 64f1bce536 (このIDを非表示/違反報告)
望(プロフ) - 文章の流れとか!キャラ同士の会話とか!ストーリーの流れが大好きです!!!自分の好みにどストライクです!!!毎日見ていられます!!!本当にそれくらい好きです!!!!!!!!!! (2021年5月4日 6時) (レス) id: 64f1bce536 (このIDを非表示/違反報告)
こなた(プロフ) - 憑喪姫さん» あ設定のところこなたになってましたよね、すみません。名前は固定じゃないので安心してください。教えてくれてありがとうございました! (2021年3月24日 18時) (レス) id: 8db0300427 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こなた | 作成日時:2021年1月25日 7時