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___A……!!!
系さん……?いや、そんなわけないか……。
いつの間にか寝ていたようで、ぼんやりとする頭を振って目を覚まさせる。夢の中で系さんに呼ばれた気がしたが、実際にそんな声が聞こえるはずもなく溜息をついた。
泉田は私が夢の国に旅立つ前に、不気味なほど嬉々として出ていった。つまりこの場には、いや、それどころかこの周辺には私1人しかいない。加えて、日も暮れたのか段々と寒くなってきた。そういえば昨日から何も口にしてないや。
「ぁ…っ…」
喉が渇きすぎて声も出なくなってきたようで、いよいよヤバいなと悟る。我慢もできなくなってきて、下を向けば涙がポロポロとこぼれ落ちた。
会いたい、早くみんなに、系さんに。
「たすけてっ……」
声を絞り出したその時。
「Aー!!!」
「Aちゃーん!居たら返事してー!」
「Aちゃーん!」
「遊喜さーん!」
近くから聞こえた声に顔を上げた。系さんに夕子さん、六郎さん、さらに木林さんの声だった。ここにいます、と声を張り上げたくても悔しいことに声が出ない。それならばと、足のロープを無理矢理緩め、力を振り絞ってドアに近づき、両腕を振り上げ叩いた。
中堂side
ダンっと激しい壁を殴る音が聞こえ、顔を見合わせる暇もなく音の発信源へと走った。
___無事でいろ……!
辿り着いた倉庫のドアは鍵がかかっていて、何度ドアノブを捻っても開く気配はない。
「おい、A!いるのか!おい!」
ドアを叩けば、「けいさん…」と微かに聞こえてきた声。紛れもなくアイツのもので、その弱々しさに焦りが募る。少し遅れてやってきた木林、久部に手伝えと言い、東海林には救急車を呼ぶように伝えた。
「今からここをぶち破るから離れてろ!」
離れたのが気配で感じ取られた後、3人で何度か体当たりをする。破られたドアの勢いそのまま中に転がり込むと、少し離れた場所でAが倒れていた。
「大丈夫か!おい!」
ゆっくりと抱き起こせば、薄く目を開いて弱々しく口角を上げた。意識はあるとほっとしたのも束の間で、ガクッと力が抜けた体。
「Aちゃん!?」
「おい!起きろ!」
必死に声をかけるが、目を覚ますことはなく只々不安ばかりが募っていく。
数分後、やってきた救急車に同伴して病院まで付き添う。道のりが酷く長く感じた。体温の下がったAの手を握り、存在なんて信じていない神に祈った。
___どうか、こいつを連れて行かないでくれ。
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月影(プロフ) - たこさん» ありがとうございます!再更新に向けて頑張ります! (2018年8月16日 22時) (レス) id: 23e17ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
たこ - とても楽しく読ませてもらいました!私もアンナチュラル好きだったので、この小説を見つけられてとても嬉しいです!続きがとても気になるので、再更新待ってます!がんばってください!長文失礼しました。 (2018年8月15日 22時) (レス) id: ca9d716e46 (このIDを非表示/違反報告)
月影(プロフ) - はらさん» ご指摘ありがとうございます!!!忘れてしまうので指摘してくれる方がいるのとても嬉しいです! (2018年5月10日 18時) (レス) id: 831fe892d1 (このIDを非表示/違反報告)
はら - オリジナルフラグ外し忘れていますよー違反行為なのでちゃんと外して下さいねー (2018年5月10日 17時) (レス) id: 9f3c62d37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トマトご飯 | 作成日時:2018年5月10日 16時