* ページ5
〇
____翌日。
首に少し傷が入っただけで大きな怪我を負わなかった私は、普通に出勤していた。なんならお昼頃は出前の配達までやった。
原付を店の横に停め、ヘルメットを外す。
密閉されていた髪の合間を通り抜けた風が、とても涼しくて爽快だった。店の横にある郵便受けに入っていた回覧板を手にとり、私は店の扉を押す。
「薫さーん。今戻りました、序でに回覧板も…」
其処で自然と言葉が止まった。
店の中央に立つ二人。
お馴染みの薫さんと、軍服を身に纏った青年。テーブル席にも同じく軍服の青年が腰掛けている。
「お帰りAちゃん!今ね軍警の方々が来てて、昨日この付近で怪しい男を見なかったかって。Aちゃんはどう?帰りに見なかった?」
薫さんの言葉に、私の心臓が跳ねた。
いや、まだ私が遭遇した人物だと決まったわけではない筈。
面倒事に巻き込まれない為にも。冷静に、穏便にいこう。
「……思い返してみましたが、特には見受けておりませんね」
「そう。Aちゃん可愛いんだから、気を付けてね?
___あ、私は回覧板を次に回してくるから」
「え」
「若い子同士の方が話しやすいでしょ?頑張ってね」←
「そっちが本音か」
「んふふ、お相手宜しく!」
そう捨て台詞を吐いて、薫さんは風のように去っていく。
彼女を引き留めるために伸ばした手は、惜しくも空を切っていた。
………この状況で一人にして欲しくなかったなぁ。なんて。
「___其方のお嬢さん。少し宜しいですか?」
穏やかで程よい低音。
その声に従い、後ろを振り返る。
先が赤く染まった白髪に、長めの睫毛に縁取られ固く閉じられた目。
彼は耳飾りの鈴をチリンッと鳴らしながら首を傾げた。
「此方の男性に見覚えはありますか?」
懐から出された写真。
____
写真に映された男は、私を厄介事に巻き込んでくれた犯人さんで間違いはなかった。
心の底から関わりたくないと思ったので、無難に否定の言葉を口にしておく。
「……ありません」
「そうですか。実はこの男を見つけた時、不可解な点を幾つか発見したんです」
え、私知らないって言いましたよね…?
関係者でも無いのに、そんなペラペラと詳細を話しても大丈夫なんですか?首とびません?
内心困惑している私を余所に、彼は目の前に"あるもの"を掲げた。
〇
301人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
オタク - コメント失礼します!まだ一編目しか読めてませんが、すでに沼にはまってます!!言葉選びとか、キャラの口調をしっかりとらえてるところももう、すごくいいです!素敵な作品をありがとうございます!二、三弾目もじっくり楽しみながら読ませていただきます! (10月15日 6時) (レス) @page50 id: 7a68ba3320 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ショートケーキの赤いヤツさん» 同じく刺さってます笑、彼のS属性(笑)を薄っすらと出しつつグイグイ行って貰おうと思います!これからも宜しくお願いします(*^^*) (2021年8月21日 23時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
ショートケーキの赤いヤツ - 条野さんのS感ヤバいですよね……刺さる←条野さんが推しなので更新楽しみにしています! (2021年8月21日 16時) (レス) id: 0727e3cb02 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うり太郎さん» コメント有り難う御座います!そう云って頂けて嬉しいです(*´ω`*)更新途中ですが続編も是非宜しくお願いします!も (2021年8月21日 0時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
うり太郎(プロフ) - ヤバい・・・・・・!尊い・・・・・・!こんな神作品を作れる作者様マジでリスペクトします!!今読み途中なんで今すぐ続き行ってきます┗(^o^ )┓三 (2021年8月19日 23時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハル | 作成日時:2021年1月7日 23時