5.開かない扉の向こう側 ページ28
○
次に起きたのは、あれから二日経った豪雨の日。
「___ぅ、ん」
蛍光灯が妙に眩しく感じて、折角開けた目を細める。
左腕に違和感を感じて視線を向けると、針が刺さっていて、針に繋がっている細い管を辿れば、液体入りのパックが吊り下げられた点滴台が隣に鎮座していた。
少し動かしただけで走った激痛も幾らか和らいで、なんとか起き上がれるまでに身体は回復していた。
さて、
起きたことを知らせようと思い立ち、ベッドから足を下ろす。
今思えば、ナースコールを使うべきだったが…そこまで頭が回らなかった。
裸足で踏んだ床は、予想以上に冷たく、容赦なく体温を奪われる。
覚悟を決めて、私は足に力を入れ立ち上がった……つもり。
びたんッと、響く鈍い音。
約一週間ぶりに行使した私の足は、歩く事すら儘ならない程に弱っているらしい。
見事なまでに、膝から崩れ落ちた。
左手に持つ点滴台を杖に立ち上がろうとするも、力が上手く入らない。
刹那。ガラリと大きな音をたてて病室の引き戸が開き、誰かの声が響いた。
「ッ!?何をしているんですかッ」
慌てて駆け寄る人物によって、顔を上げるよりも早く抱き上げられる。
「無理に動けば悪化します。そんなにベッドとお友達になりたいですか?」
眉を寄せた条野さんが私の顔を覗き込んだ。
好き好んで床に臥したい訳では無いので、否定の意を込めて首を横に振る。
「でしたら、大人しくしていてくださいね」
条野さんは片手で私を抱き、もう片手で点滴台を引き寄せた。
ベッド脇に点滴台を移動させてから、ゆっくり私を下ろし、ヘッドボードへ寄りかからせてくれる。
「で、何がしたかったのですか?」
「……つい先程起きたので、
「そうでしたか。生憎、今は別の基地に出張していますので…夕方頃には戻ると仰っていましたよ」
そうだったのか。あんなに苦労したのに、無駄足になる処だった。
窓から見えた景色は、土砂降りの雨。
既に外は暗く、時間を見積もることは出来なかった。
「具合は如何です?」
「…全身の痛みはほぼ無くなりましたが、少し苦しいです」
「呼吸が上手く出来ていないのかもしれませんね。まだ、肋骨は痛みますか」
コクリと頷けば、条野さんは少し悔しそうな顔をして私の手を取る。
「____Aさん。これからする話を、黙ったままで構いませんので聞いて下さい」
〇
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オタク - コメント失礼します!まだ一編目しか読めてませんが、すでに沼にはまってます!!言葉選びとか、キャラの口調をしっかりとらえてるところももう、すごくいいです!素敵な作品をありがとうございます!二、三弾目もじっくり楽しみながら読ませていただきます! (10月15日 6時) (レス) @page50 id: 7a68ba3320 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ショートケーキの赤いヤツさん» 同じく刺さってます笑、彼のS属性(笑)を薄っすらと出しつつグイグイ行って貰おうと思います!これからも宜しくお願いします(*^^*) (2021年8月21日 23時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
ショートケーキの赤いヤツ - 条野さんのS感ヤバいですよね……刺さる←条野さんが推しなので更新楽しみにしています! (2021年8月21日 16時) (レス) id: 0727e3cb02 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うり太郎さん» コメント有り難う御座います!そう云って頂けて嬉しいです(*´ω`*)更新途中ですが続編も是非宜しくお願いします!も (2021年8月21日 0時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
うり太郎(プロフ) - ヤバい・・・・・・!尊い・・・・・・!こんな神作品を作れる作者様マジでリスペクトします!!今読み途中なんで今すぐ続き行ってきます┗(^o^ )┓三 (2021年8月19日 23時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年1月7日 23時