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目を覚ますと、私は見知らぬ部屋にいた。
周囲を見渡そうと身体を捩れば、悶絶せざるを得ない痛みが走った。
私は声を押し殺しきれずに呻く。
「おや、目が覚めたかい」
部屋を仕切っていたカーテンが開かれ、そこから顔を覗かせた白衣を着た男性と目が合う。
そこで私は此処が病室だと気づいた。
目の前の医師が持つカルテにはしっかり私の名が入っている。
「此処は軍警基地内に併設されている医務室だよ。状況、覚えてる?」
ベッド脇に置かれていた丸椅子に腰掛け、説明をしてくれた。私は微かに頷いて見せる。
「……私、生きてるんですか」
「うん。肋骨3本にヒビが入っている上に、全身打撲。少量だけど内臓出血とか、まぁ諸々あったけど辛うじて生き延びたよ」
「…そうですか」
あのまま死んでも構わなかったのに。
そんな本音は飲み込んで、私は目の届く範囲で辺りを見回した。
足の包帯を巻きなおしてくれる
「……包帯、ぐるぐる巻き」
「そりゃあそうさ、こんなに酷いんだから。当分は歩けもしないと思うよ」
激痛が走るだろうからね。
「……よし。じゃ、条野殿を呼んでくるから」
「え」
「椿木さんが眠っている間、仕事の合間を縫って来てくれていたんだよ。それに起きたら連絡頂戴ッて言われたから」
待っててね、と布団を掛けなおされ、私が何かを言う前に病室を出て行ってしまった。
条野さん、か。
私は彷徨わせていた視線を天井に向ける。
あの時助けに来てくれた彼の顔が、妙に記憶に残っていた。
何かを言おうとして口をつぐんだ時の哀し気な表情。
条野さんが何故そんな顔をしたのか、私には分からない。
そこまで考えて、目を閉じた。
夢の中で囁かれた声が蘇る。分かってる。キミは忠告してくれたんだね。
自分自身をよく知る今日だからこそ止めてくれたんだよね。
線引きをしっかりしないと、失うことになる。
「これ以上の"幸せ"は、危険だ」
彼に関わりすぎてしまった。
この短期間だけで、自分の中で彼の存在が大きくなり始めている。
条野さんに依存をし始める前に、距離を置かないと。もうあんな思いはしたくないもの。
___苦しいのは、痛いのと同じ位、嫌い。
「……薫さんのご飯、食べたいなぁ」
〇
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オタク - コメント失礼します!まだ一編目しか読めてませんが、すでに沼にはまってます!!言葉選びとか、キャラの口調をしっかりとらえてるところももう、すごくいいです!素敵な作品をありがとうございます!二、三弾目もじっくり楽しみながら読ませていただきます! (10月15日 6時) (レス) @page50 id: 7a68ba3320 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ショートケーキの赤いヤツさん» 同じく刺さってます笑、彼のS属性(笑)を薄っすらと出しつつグイグイ行って貰おうと思います!これからも宜しくお願いします(*^^*) (2021年8月21日 23時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
ショートケーキの赤いヤツ - 条野さんのS感ヤバいですよね……刺さる←条野さんが推しなので更新楽しみにしています! (2021年8月21日 16時) (レス) id: 0727e3cb02 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - うり太郎さん» コメント有り難う御座います!そう云って頂けて嬉しいです(*´ω`*)更新途中ですが続編も是非宜しくお願いします!も (2021年8月21日 0時) (レス) id: 64577bab6f (このIDを非表示/違反報告)
うり太郎(プロフ) - ヤバい・・・・・・!尊い・・・・・・!こんな神作品を作れる作者様マジでリスペクトします!!今読み途中なんで今すぐ続き行ってきます┗(^o^ )┓三 (2021年8月19日 23時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年1月7日 23時