はちみつ色の日々 ２

＊ ページ3

━━北山side



やっちまった。
完全にやりすぎた。


そのまま寝転ぶようにラグに体を預ければ
まだ少しだけ残ってるAの香り。






「どうしろっつーんだよ……」





五年前にAから別れを告げられて
まさかまた再会するだなんて思ってもいなかった。

運命じゃね？とか同僚に言われたりしたけど
ご飯に誘ったのに断られたのはショックだったから
もう無理なのかなって半ば諦めてた。

けど、会う度に話してればまたあのころの気持ちが蘇るし………

それなのにその気持ちを一気にぶつけ過ぎて
挙げ句の果てにはキスしようとしちゃって
傷付けて逃げられた。






「一回別れたらもう無理なのかもなぁ………」





そう呟いた言葉は部屋の冷たい空気に飲み込まれて
俺はそのまま目を閉じ、いつの間にか眠りについていた。





.








━━━You side


「お疲れ様でした〜」




あの一件以来、宏光とは会ってない。

ていうか会わないように帰る時間を遅くずらしてるから
意図的にそうなってるだけだとは思うけど。

いつまでこんなこと続けなきゃいけないんだろ……。



そんなことを考えながらマンションに着き
自分の階でエレベーターを降りると
珍しく人の話し声が聞こえてくる。

瞬間的に嫌な予感がして視線を部屋の方に向ければ
宏光と知らない女の人が
まさに部屋の中へ入ろうとする場面だった。






「………こんばんは、」





それに気付いた宏光が先にそう声をかけてきたから
私も反射的に頭を下げて挨拶をした。


けど、心の中は動揺が半端なくて
鍵を取り出そうとする手が震えてる。





「北山さんっ、早く早く
アイス溶けちゃうよ〜」


「あ、あぁ、うん」





甘い声を出してる女の子に急かされるように
扉を開けた宏光。

私はというとその場から動くことも出来ずに
ようやく見つけた自分の鍵をカバンの中で強く握りしめてるだけ。






「………じゃ、おやすみ」





女の子はもう部屋の中に入ってて
私が"おやすみ"って口にしてしまえば
二人は部屋の中で………、




どんな関係なのかとか
何をするのかとか、何も知らない。

でも、どうしたって嫌だった。

宏光が私以外の人を部屋に入れてしまうのが、
私以外の人を愛してしまうのが。



もう………、別れたはずなのに。

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