泣き顔マニア ２

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「じゃあ、今日は帰るね。
飲み過ぎないでよ？」


「もうさすがにギブだし〜
このまま寝落ちる」


「ちゃんとベットでね？」


「なんか母みたい」


「やめて」


「んはは、うそうそ」





すっかりいつも通りの私たちで
さっき感じた男の裕太がもはや夢みたいだ……。





「あ、これ忘れてるよ」


「あ………、」





帰ろうと立ち上がると
テーブル横に置いてた北山先輩へのプレゼントを渡されて、

小さなその袋を裕太の手から受け取って
それを強く握り締めた。





「どしたの？」


「……ううん、ありがと」





この誕生日プレゼントを渡して先輩の喜ぶ顔が見たいのも本音。

でも裕太のことが好きなのも変わらない事実。



先輩のことも裕太のことも失いたくないのは
やっぱりワガママなのかな……？







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＊＊＊＊＊


━━ヴー、ヴー、

帰り道またかかってきた電話に
一度深呼吸をしてから通話ボタンをタップした。




………何を話せばいいのか、結局答えなんて出ないまま。






「もしもし…？」


「お疲れ〜、風呂とかだった？」


「あ、うん……ごめんなさいさっき出れなくて」


「別にいいよ、謝んなくても」





風呂か〜、って意味深にしみじみ言うから
何想像してんですかっ！っていつもなら怒れるんだけど………





「………なんかあったか？」




分かりやすい私が悪いのか
先輩が鋭すぎるのか、やっぱりすぐに気づかれちゃう、





「な、なにもないです……っ」


「うそつけ、言えって」


「ほんとに………、」



"なにもない"なんて見え透いた嘘。

いつもまっすぐ向き合ってくれる先輩に
こんな嘘をつく自分が酷く最低な人間に感じる。



でも先輩はね………、






「今どこいんの？」





って、すぐにでも優しい声で私を助けようとしてくれる。


こんな卑怯な私なんて
先輩みたいな人に好かれる資格すらないのに……。






「裕太の………、とこです、」


「え？」






立ち止まって、空を見上げて、





「私やっぱり………、裕太がすきです………」





涙が零れないように。



こんな私に
お前最低だな、って軽蔑しちゃうような人だったら
私もこんなに苦しむこともなかったのにな……。

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