泣き顔マニア ２

７８ 北山side ページ29

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玄関が開いて、Aが出ていく音がする。

追いかけなきゃ、って思うのに
その場から全く動けずにいた。



……つか、追いかけちゃ駄目なのか。

追いかけたらそれこそ同じことの繰り返しだし
またAを苦しめるだけだっつーのに。






"先輩のことは、好きです……"


って言葉も、無理して言わせちゃって
それなのにその言葉がめちゃくちゃ嬉しかった。

…………嬉しかったからこそ
裕太に気持ちがある状態で言われるのが
想像以上に辛かった、無理だった。






「どうすんだよ、このケーキ……」




ははっ、て乾いた笑いが出てきて
ぼんやりと見える目の前のケーキを見つめた。


本当だったらこのケーキを
頬いっぱいに詰め込んで幸せそうに笑うAがいるはずだったのに、
そのために買ったようなもんなのに、


自分が帰れって言って帰らせたくせに
まだ泣いてるんであろうAに
会いたくて会いたくて、たまらない━━。






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＊＊＊＊＊

「よーっす」


「どうしたんすか？
休みの日に誘ってくるなんて珍しい〜」





次の日の日曜日
夕方頃に近くの居酒屋に玉を呼び出した。

暇だったのかすぐに来てくれて
席に着くなり烏龍茶を頼んでる。





「ちょっとな、話したいことあって。
まぁ食え食え、飯まだだろ？」


「おー、いいんすか？」





やったぜ、ってもう頼んどいたテーブルいっぱいの料理を
楽しそうに食べ始めてる。

玉のせいでAと上手くいかないとはいえ
やっぱ憎めねんだよな、
むしろ可愛い後輩すぎて、今まで散々甘やかしてきた気するし。






「お前思ったよりも元気そうだな」


「そうっすか？
結構落ちてるけど、先輩に弱いとこ見せてもね〜」


「Aに弱いとこ見せたら慰めてもらえるってか？」


「んはは、まぁ男に慰められるよりよくないですか？」





そりゃごもっともだけど。

遥と別れてもっと俺にも愚痴ってくるかと思ったけど
さすがに元彼の俺には愚痴れねぇか。

つかまだ遥のこと好きなんだろうし……。





「で？先輩の話って？」


「あー……、うん」




だし巻き玉子をポイッと口に放り込みながら
そうゆるーく言ってきた。

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