泣き顔マニア ２

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「Aおはよ〜」


「あっ、裕太おはよ」




普通にいつも通り挨拶したつもりだけど
やっぱりちょっとぎこちなくなっちゃう。

昨日北山先輩と色々あって
裕太に罪悪感というか……、
いや、罪悪感を感じる関係性でもないんだけどさ。




「昨日どうだった？北山先輩」


「えっ？！？！」


「あれ？残業手伝いに行かなかった？」


「あっ、う、うんっ」




そ、そっか。そっちね。
だよね、キスしてたことなんて知られてるわけないよね。




「………なに？なんかあった？」


「べ、別にっ？！？！」


「Aって分かりやすいよね」




はーん、って分かったような顔で言われてるけど



「その分かりやすい私の気持ち
なかなか汲み取ってくれないよね、誰かさんは」


「…………はて？」


「とぼけないで」


「んはは」





長年裕太のことを好きな気持ちを
知らないフリしてんだか、本当に気付いてないんだか。

でもこうやって今笑って話せてるってことは
少しでも裕太への気持ちが薄らいできてるってことなのかな……。





「よし、がんばる！わたしも！」


「ん？なにを？」


「なんでもないっ！
さ、仕事しよ〜っ！」





パンっ、て頬を叩いて気合を入れる。

前を向こう、引きずってばかりじゃなくて
みんなみたいに、ちゃんと前に進まないと。





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＊＊＊＊

「北山先輩、今日空いてますか…？」




仕事も終わりに差し掛かった頃
コピー機のとこでたまたま二人きりになった。

お疲れ、って微笑んでくれる先輩にそう声をかけると
お化けでもみたかのように目を見開いて驚いてる。




「そ、そんな驚かなくてもっ」


「えっ、だってAから誘うなんて珍し」


「前向きに考える、って言ったからには
頑張ろうかと思って」


「……なるほど、」




ふむふむ、って驚き顔から
鼻の下を伸ばして分かりやすいほど、嬉しそうな顔に変わった。




「ふふっ」


「あ、なんで笑うんだよ」


「えへへ、ごめんなさいっ」


「謝りにも笑いが含まれてるっ」




このまま先輩を好きになれたら
凄く幸せなんだろうな……、とは頭では思えるんだけどな。

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