泣き顔マニア

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「おはようございます」


「…………はようございます………」







あまりにも元気のない裕太のその挨拶に
思わず隣を見やって肩をぶつけてしまった。

いつも遥さんには尻尾振って元気に接してるだけに
そんな元気がなかったら怪しまれるじゃないっ。







「あれ？裕太くん元気ない？」


「あーーーの！！
昨日ね！ちょっと飲みすぎたんだよねっ！」


「あ、そっか。
昨日宏光と飲んでたんだっけ？
ごめんね、あの人しつこくて付き合わされたでしょ」


「い、いえいえ……っ、」








北山先輩と飲んでたことは知ってたんだ。

別れる、ってこととか
告白されたこととかがフラッシュバックして
なんだなまともに遥さんの顔が見れなくて目線を逸らしてしまった。








「はい、これで元気だして今日も頑張ろうね」







カバンからおもむろに取り出した飴を裕太に渡して
にっこりと微笑む遥さん。

子供じゃないんですから、って
ようやく笑顔というか、いつものデレてる顔に戻った。









「Aちゃんも、桃味の飴どうぞ」


「あ、ありがとうございます」








裕太を元気にしてあげられるのも
ときめかせるのも全部遥さん。

私がいくら必死でもがいたって出来ないことを
彼女はいとも簡単に出来てしまうんだ。





それが悔しくて悔しくて、
でもどうしようもない。




.





.






.



「A、これお願い出来る？」


「はい」


「…………」


「…………」






パコっ。






「痛っ、」








北山先輩に頼まれた仕事を普通に引き受けたのに
なぜか資料を丸めたもので頭を叩かれた。







「何するんですかっ」


「ボーッとすんな、仕事中だぞ」


「え、ちゃんと私は引き受け、」


「じゃあこれをどういう風に引き受けるつもりだったわけ？」


「これ…………は……………、」








改めて目を通してみると
ちゃんと先輩から支持を受けないと出来ない仕事だった。







「…………すいません、」


「ったく、しっかりしてくれよ」


「だって先輩が……」






そもそもあなたが私たちを掻き乱すから、って思ったけど
一応仕事中だしグッとその言葉は飲み込んでおいた。

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