キラハグ

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「別に宏光でいんじゃね？」


「………え？」







ひろみつ、って誰だっけと一瞬考えてしまうほど
先生の本名に馴染みがなかった。

だってペンネームが、北山すすおだったから。









「それが一番ナチュラルじゃん？」


「いや…、急に先生をナチュラルにひろみつ呼びしろと？」


「おん」








"宏光♡"だなんて呼べるかーーっ！！
(誰もハートをつけろとは言ってない)








「あの、もうちょっと違う呼び方を……」


「えー？じゃあもうお前考えて」







面倒になったのか、これ可愛いな〜ってピンクのベビー服を広げだす始末。


その背中を見つめながら
んー…、と頭を悩ませる。








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「………ひろ、」


「ん？」








小さく呼んだその私の声にも
ちゃんと反応してくれたのがちょっと嬉しかったり。









「ひろ、にしますね。」


「ふはっ、そっちのがハードル高くね？」


「いやいや、ひろみつの方が私にはハードル高いですって！」


「ま、いいけど。その呼び方のが新婚っぽくて」









鼻の下を伸ばす先生の腕を
持ってたカバンでバシっと叩いた。









「痛っ」


「もう！ほら、先せ……、
じゃなくて、………ひ、ひろ……、」


「っぷ、くくくっ」


「笑わないでっ！！///」








可笑しそうに笑いをこらえてるその姿に
ぷいっとして、先生が可愛いと言ったその服をカゴに入れずんずんと先に足を進めた。








「待てよ〜A〜」


「A？！」








せっかく足を進めたのに、聞き慣れないその呼び方にまた足を止めてしまった。









「嫁を呼ぶのに、栗谷じゃおかしいだろ」


「……嫁じゃないですけど、」


「(仮)嫁。」


「なんですかそれ」








ふはは、って今日はよく笑う先生。

たまに仕事が一段落すると
アシスタントみんなと先生とで飲みに行ったりするけど
その時ともまた違うようなこの雰囲気。

(仮)でも、"嫁"という言葉にうっかりドキドキしちゃいそうな自分が怖い。

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