キラハグ

４ ページ4

.



むむむ、と考え込んでいると
腕に収めてる赤ちゃんが、おもむろにギュッと私の髪の毛を掴んだ。







……可愛い。

もともと子供が嫌いなわけではないし
純粋にこうも私の抱っこで落ち着いてくれて、髪の毛を安心するかのように握ってくれる子が可愛くないわけがない。

それに私が面倒見なかったら
この子はどうなることやら……。









.









「……給料、いくらアップしますか？」


「え？」









どうせ私には突き出た漫画の才能もないし
ずっとアシスタントをして、適当な頃に恋愛をして結婚してっていう人生なんだし。









「給料次第で、この話引き受けます。」









だったら今とことんお金を将来のために貯めておいて
すっぱり仕事をやめて、未来の旦那の専業主婦になろう。

その来るべき未来のための、子育ての練習だと思えば、









「今の二倍出す。」









この子の面倒を見てやろう、と思ってしまったのだ。









「三倍で。」


「おい、あんま調子乗んな」


「だったら引き受けませーん」


「………ったく、」









折れてくれた北山先生と、してやったりの私。


"交渉成立"と、手にしていたファイルで私の頭をポスっと叩いた。









「じゃあとりあえず住み込みな。
部屋は家の方自由に使っていいから」


「え？！住み込み？！」









まさかの"住み込み"という事実。

そんなの聞いてない！と、講義をするも

"こーしょーせーりつ"とニヤリ顔。








「今までだってアシとしてほぼ24時間ここにいたりしてたじゃん」


「それとこれとはまた話が別なんじゃ？！」


「とにもかくにも、もう交渉成立したんだから
荷物持ってうちに来い」


「……横暴。」


「あ？」


「いいえ、なんでもないです。」









ため息をついてみるけど、ふと目に入る腕の中の天使に癒される。







.









「そいつ"ひかり"っていうらしいから、よろしくな」








ひかり〜、って赤ちゃんを覗き込みながら満面の笑みを見せた。

その今まで見た事のない笑顔に不覚にもドキッとしちゃったじゃん。

５→←３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す