嘘つきなキス

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優しく身体を沈められたそのベッドはふかふかで
覆い被さるようにして私の顔の横に両手をついた彼に
少しだけ私の頭もベッドに沈んだ。









「これ可愛くて脱がせんのもったいねぇな」









ちゅっ、て唇に軽く触れると
そのまま少しずつ下に降りていく唇。
首元、鎖骨、胸元と………。

そこで一度止まって、私の様子を伺うように見上げてくる。









「これって下着つけてんの？」


「う………ん、一応…」


「そっか、これか。」






透明なのに付け替えた下着の紐を
パチンと軽く指で弾かれた。







「コスプレの子とするのって初めてだけど
なんか変な性癖に目覚めそう」









そう言って笑った彼の笑顔はすごく無邪気で
この余裕のない状況でも不覚にも可愛いと思ってしまった。









「下は？普通の下着？」


「……ゃっ、」









脱がされることもなく、太ももを撫で上げられてるだけなのに
それだけで反応しちゃってる自分が恥ずかしい。









彼は私がこの歳まで初めてだったなんてことは
全く気にもしてなくて、
むしろ楽しんでる気がした。


突然目の前に現れた、簡単に召し上がれそうな状態だった私のことを
じゃあ遠慮なく美味しくいただこうかな、って
きっとその程度の感情。



嫌でも分かる。


だって出会ったばかりの男に簡単についていくような女に、恋愛感情なんて持ってくれるわけがないし。




私だって─────。




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「…っぁ、はぁ……、ゃっ、」


「本当にまた腰抜けちゃったね」









彼の上に乗せられて揺さぶられて
初めてなのにあまりに激しすぎるから
色んなことについていけなくて
倒れ込むように硬い胸に抱きついたあたりから
もうほとんど記憶は途切れていた。









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「………ん………、」






聞き慣れない控えめなアラーム音で目が覚める。

ベッドサイドに取り付けられている時計から鳴っていることに気付いて
どうやって消すのか苦戦しながらもどうにか止められた。




彼の姿はどこにもなくて
サイドテーブルの上に置いてある一枚の名刺。

酷く怠い身体をなんとか起こしてその名刺を手に取れば
"KISS"と書かれた下に"北山 宏光"の文字。


それを見て、そういえば名前も知らないまま抱かれちゃったんだと今更ながらに気付く。









"080-xxxx-xxxx"
また連絡ちょうだい。









名刺の裏に書かれていた綺麗な文字が
泣きたくなるくらい嬉しかった。

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