嘘つきなキス

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「今日平日だしA仕事っしょ？」


「あ、うん」


「俺も。だから駅まで一緒行こっか」








そっか、そうだよね。
バンドだけしてるわけじゃなくて
ちゃんと働いてるんだ〜、なんて今更ながら思った。


プロ……にはならないのかな？
いや、そんな簡単になれる世界じゃないんだろうけど。

でもめちゃくちゃ歌上手いのにな。






「その前にシャワー…、一緒浴びる？」









体をくっつけられてそう言われて
これ以上は身が持たない…！と、勢い良く頭を横に振った。








「くくっ、顔真っ赤」








つん、って私の頬を人差し指でむにゅっとすると
私から身体を離し、起き上がって伸びをするひろ。

伸びをしたことで剥き出しになったその身体に
生唾を飲む勢いで動揺してしまい
先にシャワー浴びといでって有難い言葉に
急いでベットをあとにして浴室へと向かった。









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それから色々と準備をして
二人でホテルをあとにした。

昨日ここに入る時は周りは暗くてよく分からなかったけど
朝日が眩しい今改めて周りを見ると
結構普通の大通り沿いだから恥ずかしさが半端ない。

ひろは普通に堂々と歩いてるけど
私はなんとなく、誰に見られてる訳でもないのにこそこそしてしまう。









「あの、いつもお金払ってもらってすみません」


「え？いいよいいよ。
逆にホテル代女の子に出してもらうとかないっしょ」


「そっ……か。」







そうか、そういうもんなんだ。
納得するとまた隣で楽しそうに笑ってる。








「Aはなんの仕事してんの？」


「んー普通のOLだよ。営業のアシスタントって言えばいいのかな、内勤の仕事」


「ふーん、OLなら合コンとか出会いがたくさんあるっしょ？」


「あるけど…、いつも乗り気じゃないのが伝わってるのかうまくいったことはないよ」


「ふーん。俺にはノリノリでついてきたのにな」


「そ、それはっ……！」


「いっぱい口説かれたでしょ、普通に可愛いし話しやすいのに、男経験なかったなんてほんと不思議」


「そんなこと、ないけど……」








ほんとひろの言う通り
初めて会ったばかりのひろにはいとも簡単に抱かれて
それまではずっとどの男の人に対しても興味が持てなかったのに。



なのに突然、恋愛経験すらすっとばして
いけない関係を始めてしまうなんて
私の人生最大の不思議だった。

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