嘘つきなキス

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「じゃ、気ぃつけて」


「うん、ひろも」








駅に向かう途中色んな話をした。

ひろが普段は普通の会社員だってこと。
とにかくお肉が好きだってこと。
一人暮らしでほぼ毎日外食で
油断するとすぐ太っちゃうってこと。

でもなぜかバンドを始めたきっかけだけは



「うーん、なんとなく？」



って、曖昧に濁らせられたのが
なぜか胸に引っかかった。

本当にただなんとなく始めただけなのかもしれないけど
私にはそうは見えなかった。









「木曜日、またライブやってるから良かったら来てよ」


「……うん」









ライブ終わりじゃなきゃ会えないんだ、って少し心が痛んだけど
向けられる笑顔が嬉しくてすぐ頷いた。




"好き"なのかなぁ、私ひろのこと………。





そんなことを考えながら
可愛く手を振ってる彼に手を振り返して
別々の電車に乗り込み、現実へと戻っていった。









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「おはよー」


「ねぇA！聞いて？！」








出勤するなり興奮気味に詰め寄ってきた美月ちゃん。
どうしたものかと耳を傾けると
会社の廊下に引っ張りだされて嬉しそうに話し始めた。









「実は、彼氏出来ちゃった！」


「えー！ほんと？おめでとう！」







まさかの報告に思わず大声になっちゃったけど
そんなの気にすることもなく嬉しそうに笑ってる。








「でも……、彼ね？美容師なんだよね……」


「美容師……、だとダメなの？」









笑顔から一変、複雑そうな顔に変わるその表情に
訳がわからず首を傾げた。









「知らない？彼氏にしてはいけない3Bってやつ」


「さんびー？」







聞いたことも無い言葉。
私が首を横に振ると
美月ちゃんは呆れながらも説明してくれた。




"美容師"
"バーテンダー"


そして、


"バンドマン"


この三つの頭文字を取った三大Ｂが
彼氏にするには気をつけなければいけない職業なんだって。


バンドマン………



ひろの顔が浮かんで、胸がぎゅっと苦しくなった。

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