嘘つきなキス

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「そ、そんなのがあるんだ……」


「うーん、まぁ私の彼は大丈夫って信じたいけど…」


「そ、そうだよ！
そんな迷信みたいなの信じる必要ないよ！」


「だよね！
美容師はバーテンダーとかバンドマンに比べたら全然誠実よね！」






えっ。






「う、ち、ちなみに、一番やばそうなのって
どのＢだと思う………？」







そんなのは迷信。
信じる必要ない、とは思うものの……、









「一番やばいのは断トツでバンドマンじゃない？」








ぐさーーーーーっっ。









「あ、え、そ、そう？」


「バンドマンなんて、女とやるためだけにバンドしてるようなもんでしょ」


「そ、そうかな……」


「ま、分かんないけど。
とりあえず今度彼のこと紹介するねっ」









パタパタと浮き足立って戻っていく美月ちゃんの後ろ姿を見送りながら

残された私はひとり、途方に暮れた。





いや、分かってはいたけど。

バンドマンが遊び人なのは、ひろを見れば分かる。
まともな恋愛が出来る相手じゃないってことも。

でもそんな有名な"３Ｂ"に入ってしまうほど
バンドマンが危険な職業とは……。









「今のうちに離れるべきなのかなぁ……」









まだこの気持ちが浅いうちに離れるのが正解なのかもしれない。
このままじゃ、自分だけがどんどんのめり込んで、あとで辛くなるのは分かってる。

でも………、

あの声とか、仕草とか、温もりとか、優しさとか。

あれらが全部、全部、酷いことだなんて思えなくて。
むしろひろと過ごす時間は、楽しくて、嬉しくて、幸せしかないから。




離れるなんて。






「A〜、朝礼だって」


「あ、うん、今行くっ」









今日は金曜日。

彼に会えるまであと一週間。

さっきまで会ってたはずなのに
もう会いたいこの気持ちを
今更なかったことになんて出来るはずもなかった。

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