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そして━━━木曜日。
悩みに悩んだ結果
結局、来てしまった。
名刺に書かれていた地図を頼りに行けば
そこは想像していたよりも大きなライブハウスで
入り口でチケットを買い、緊張しながら重たいドアを開けて中に入ると
鼓膜が破けるんじゃないかと思うほどの音量と黄色い歓声と熱気。
一番後ろのバーに捕まって何とか場所を確保した瞬間、聴こえてきた歌声に、想像してた通りだったと嬉しくなった。
「ほんと綺麗な声……。」
出会った時から、凄く魅力的な声をしてると思ったから、バンドマンだと知って
すぐに彼はボーカルじゃないかなって思った。
話し声や普段の声は少し鼻にかかってて甘いのに
歌声になると、その甘さを残しつつも
力強く、伸びやかな声になる。
彼の姿を見て、声を聞いたことで
あの日ことをぶわっと思い出して
ライブハウスのバーに寄りかかりながら
一人で勝手に照れてるという、変質者っぷり。
「いけんのかっ!」
「きゃーー!!!!」
「もっと声出せんだろ!!」
「きゃーーーーー!!!!」
彼の煽りに興奮して歓喜するファンの子達。
曲中のC&Rとか、彼の表情から楽しさが伝わってきて鳥肌が立っちゃうほどで。
バンドのメンバーと絡みながら歌う姿も。
かっこいい。
かっこよすぎる。
そんな彼の姿に、歌声に、ただただ魅入っていたら
いつの間にかライブは終わっていて
名残惜しそうな女の子達に手を振りながらステージから捌けていく彼が見えた。
…………私も帰ろう。
寂しさを断ち切るように
思いっきり方向転換をしたら
こともあろうにライブハウスのBARの店員さんに体当たりしてしまい
その人が持っていたトレイを思いっきりひっくり返してしまった。
「ひゃっ!ご、ごめんなさいっ!!」
「お客様こそ大丈夫ですか?!」
店員さんはライブが終わったので、このライブを見に来ていたお偉い関係者の人にお酒を運ぼうとしていたところだったらしい。
お酒が服にかかるわ、床は濡れるわ
相当な注目を浴びてしまって恥ずかしくなる。
「すいませんっ、私は全然大丈夫ですけどっ」
「でも洋服っ」
もう帰るだけだしそんな高い服でもないし、と心配する店員さんに大丈夫ですと告げれば、
「みーつけたっ」
後ろの方から声がして
さっきまでステージの上で輝いていた彼が楽しそうに私を見て笑っていた。
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くまのこ(プロフ) - だいぶ出遅れました…はちみつさんとはちみつさんの書くお話が大好きです!終わらせずに受け継いでくださったことを感謝致します!他のお話楽しみにしてます〜!はちみつさん好き!!!! (2020年1月15日 11時) (レス) id: 9fffa79d91 (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - はちみつさん!!全然気にならさらないでくださいーーー!!はちみつさんが書かれるお話は何でも大好きなので!!!←声を大にして笑!わざわざメッセージありがとうございます!!これからもコメントいっぱいさせていただきますっ!笑←迷惑な奴(笑) (2019年12月28日 18時) (レス) id: 773bebed2a (このIDを非表示/違反報告)
ユーミン(プロフ) - お疲れ様です。こちらは楽しく読ませてもらってるので書かれるのは大変だと思います。 (2019年12月28日 17時) (レス) id: 3a1ba1b625 (このIDを非表示/違反報告)
mora(プロフ) - なんと!!!消してしまうんですか!?えーん…このお話も、好きなのに残念です(T▽T) (2019年12月28日 16時) (レス) id: daf44fdab0 (このIDを非表示/違反報告)
みちこ(プロフ) - あら残念(^_^;)途中きっとこの北山さんは主を好きになるのかなと期待をしていたのですが(^_^;)作者様の意向ですから仕方のないことです(^_^)キラハグ、恋愛注意報は楽しみにしています!今年も沢山楽しませてもらいました(^^)良いお年を! (2019年12月28日 12時) (レス) id: 95022a0a60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちみつみゆ. ましろ | 作成日時:2019年10月2日 19時