嘘つきなキス

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「ゔゔ、ひろ………」


「明日は確実にブサイクA決定だな」



そう茶化しながらも、私を腕の中に入れてくれたひろは、私が泣き止むまでずっと背中をさすってくれていた。




「朝までもう少し寝れるし、そろそろ寝ない？」


「う、ん」




こんなに優しい人を捨てて
違う男の人と駆け落ちしちゃうなんて
私にはあいりさんて人が信じられなかった。




ひろに愛されたら、絶対に今の何倍も、何百倍も幸せだろうなって思うのに。





あいりさんの写真をネットで見たけど
肩までの赤髪が印象的で
すごく目がぱっちりしてて大きくて
顔がちっちゃくて、細くって。


めちゃくちゃ可愛い女の人だった。


なのに歌声はエッジ感のある、明るく澄んだ音色で、あの細い身体から天に突き抜けるようなパワフルな高音が出ることにびっくりした。



そんなあいりさんを
ギターを弾きながら愛おしそうに見つめているひろの顔が頭から離れない。





「もしかして眠れねぇ？」


不意に後ろから抱きしめられる。


「ごめんっ、ひろは寝ていいからっ」


「変なもん見っからだよ」


言われた瞬間、首筋に押し付けられた柔らかな唇の感触にびくんっと身体が震えた。


「相変わらずビンカンだな」


その上、悪戯な指が着衣の中に滑り込んできて
二つの突起をくるくると撫で回すから


「ふっ…、んっ、ぁっ、ん」


甘い息が洩れる。


「もう、ぷっくりしてきた」


「ひ、ひろ……っ、ぁん、やっ……」


「嫌じゃ、ねぇだろ」


いつもより少し強引で
少し性急な指に苦しくなる。

眠れないのはひろだって
一緒だったんじゃないの？
まだあいりさんのこと、



忘れられないんじゃないの────？




言えない言葉を誤魔化すように
私を求めてるってわかっても

求められてるのが身体だけだと知っても
ひろのことを嫌いになれない。




「ん、ぁっ、ひろっ……！」




初めて、



顔が見えないまま繋がった。



後ろからすぐに貫かれて
背中がしなる。




顔を見られたくないの……？




でも私も同じだった。








こんな嫉妬でぐちゃぐちゃな顔




見られたくなかった────。

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