嘘つきなキス

３５ 北山side ページ35

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「ご、ごめん、起こしちゃった？」




目を真っ赤にさせてポロポロ涙を零して
よく見れば鼻水まで……

とにかく、ぐちゃぐちゃの顔したAが
慌ててベッドに戻ってくる。




「う、うるさかったよね、
ごめんなさい」


「俺、うなされてた？」


「う、うん、少し……？」


「なんか変なこと言ってた？」


「………あいり、って………」


なるほどね。
だから、気になって調べてたってことね。




「そういうのは、大抵面白可笑しく書いてあるもんだから大袈裟なの」


「う、うん、分かってる、分かってるけどっ」




安心させるように言ってやっても
なかなか泣き止まないA。


ああ、やっぱこいつって空気清浄機だわ。


ささくれだった心も、モヤモヤした気持ちも
Aといるだけで薄まっていく。




「ならいつまでも泣くな、鼻かめって」



枕元のティッシュを箱ごと渡せば
その箱抱えて泣き続けるA。



「でも、ひろが……すごい辛かったのは、事実でしょっ、ﾋｸｯ」


「昔のことだよ。もう今はなんとも思ってねーから」



そう言ったものの、
未だに夢に見てうなされるとか
全く説得力ねぇな、と自分でも呆れてしまう。




それに、




本当の俺はそんなに泣いて貰えるような人間じゃないから。




原因は全部、俺にあるんだから。









なぁ、あいり、

今、幸せ………？









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───４年前


夢も、仲間も、愛する女も手に入って
怖いものなしだった俺は
きっとものすごく調子に乗っていたんだろう。

誰かの心の痛みも
不安も気づかずに

前しか見ず、見ようとせず
色んなことを置き去りにしてきたんだろう。

小さな歪みはどんどん大きくなって
グループの方向性はバラバラになって
あいりはプレッシャーという重圧に心のバランスが上手く取れなくなった。


そんな彼女が藤ヶ谷を頼って
あいつに惹かれていったことを責めることなんてできない。




全部、俺が悪いんだから。




だからもう、そこそこでいいんだ。
楽しくバンド活動がしたいだけ、という今のメンバーの意志を俺は尊重したい。




デビューなんてどうでもいい。




二度と誰のことも傷つけたくはないから────。

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