嘘つきなキス２ (ページ10)

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「はい、これクリスマスプレゼント。
クリスマスには渡せなかったから」

「え？」

玉森さんから突然腕に嵌められた天然石のブレスレット。
紅玉(ルビー)と水晶のみで作られた深みのある赤が美しいシンプルなブレスレットをびっくりして見つめてると、

「紅玉はAの誕生石でしょ？
この石はね恋愛関係を一歩進める力と
Aの魅力をもっと引き出してくれる力があるんだって」

玉森さんが私の頭を撫でる。

「もっと自分のこと大事にして
今度はちゃんと最初から恋愛していこ？

って俺が言うなって感じだけど」

ははって照れたように笑う玉森さんに
「ほんとですね」と私も思わず笑ってしまう。

「私、何も用意してないのに………」

「いいよいいよ、今年のクリスマスにもらえれば」

それはさりげない未来の約束。

「指輪やネックレス程、重くないでしょ？
だから着けて貰える？」

「はい、あのっ、ありがとうございます」

「それからもう一つお願い」

「なんでしょうか」

「敬語やめて、名前で呼んで。
裕太って」

どんどん縮められる距離。

でもそんな強引なことでもされない限り
私は心を閉ざしたまま、ずっと独りで暗闇の中でうずくまったままだっただろう。

「呼んでみて」

「………裕太………？」

「うん、いいね。
言霊って大事だからね。それは俺のこと好きになってくれるおまじないだから」

裕太って呼んで。

何度も甘い言葉で囁かれる。

裕太の笑顔は心があったかくなる。
裕太の言葉は心を軽くしてくれる。

本当はこうやって始まっていくものなんだろうか。
名前も知らないで抱き合うような始まり方は、そもそも始まる可能性すらないんだから。

「これからしばらく忙しくて会えなくなるけど、浮気しちゃダメだよ」

別れ際、裕太はそう言って
私のおでこにキスをした。