嘘つきなキス２ (ページ29)

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２９北山side ページ29

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尽きることのない欲や渇望は
生きている証。

けれど、どんなに願っても手に入れることが叶わない苦しみもまた

生きている証なんだろう──────。

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Aを見ていると
あいりを思い出す。

顔も雰囲気も特に似ているわけじゃないけれど、自分の才能も魅力も知らずに、いつも自信なさそうに俯いていた少女と

そして大した遊びも、男も知らずに生きてきた女の子。

俺が女にした２人。

俺の傍でどんどん自信を持って綺麗になって、俺に夢が叶う場所まで連れていってくれたあいり。

そして、いつだって健気で一途に、わがままで自分勝手な俺を受け入れてくれたA。

ずっとその優しさに甘えて
溺れていられたらどんなに幸せか。
そう何度思った。でも。

だからこそ全て同じ結末を辿っていくのが怖くて
玉森を傷つけることが怖くて。

結局Aから離れることしかできない自分があげられたものは

嘘だけ─────。

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「ごめん、A……」

早くこんな最低な男のことなんて忘れて見限って
幸せになって欲しい。

本気でそう思った。なのに、

「………だよ」

啼かせすぎて、疲れて眠っているAへ囁いた言葉は真実だった。

「っくっそ……」

どうすることも出来ない自分自身への苛立ち。
吐き出せない想いに胸が焼け付きそうだった。

すると、

「ひろ………大丈夫だよ…………」

疲れて眠ってしまっていたAが
いつの間に目を覚ましていたのか俺を見上げてふわっと微笑むから。

「自分を責めないで、ね………？」

「そうやっていつも俺を甘やかすなよっ……」

だから甘えてしまう。
溺れてしまう。

もう少し、もう少しだけと
願ってしまう。

「お前がっ、そんな………だからっ」

Aに覆い被さると
その小さな唇を啄んだ。