嘘つきなキス２ (ページ25)

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幸か不幸か空いていた部屋。

ひろがこの部屋を覚えてるかも分からないまま
"空いてたよ"とだけLINEを打って
広いベッドの上に座り込む。

「あ～！なにやってんだろ私」

なんて大胆なことをしてしまったんだろうって
今頃になってバクバクが治まらない心臓。

いつもは平穏で平凡の毎日が１番だと思って生きてるのに
ひろのことになると後先考えずに行動してしまうところは未だに変わってなくて。

きっと呆れただろうな。

しかも、ひろは私が既に裕太と付き合ってると思ってるかもしれない。

「そしたら私、めちゃくちゃ最低女だよね」

冷静になれば今度は後悔が胸を襲う。
でも、きっとこの日を逃したら
もう２度と次はないような気がして。

今日はハロウィンナイト。

仮装して、本当の自分じゃなくなって、本音を隠して
１年前の夢をもう一度見れるなら。

今夜だけ、悪魔にだってなんだってなれる気がしたの─────。

.

「て、来るわけ、ないよね………」

自分自身に呆れながら
冷たいベッドの上に洋服のままゆっくりと横たわって目を閉じる。

「いつもと変わらぬこの部屋も
特別になるんだ♪」

ひろの歌声を思い出す。
甘く、切なく、胸を締め付けるひろの歌声を。

ひろがいたから
ひろと一緒だったから

やる為だけ仕様のいかにもな部屋も
私の平凡な毎日も

全部、特別になった。

ひろがいるから特別になった。

ひろが私を見つめてくれたから
私に触れてくれたから

自分のことも前よりも好きになれた。

閉じた目から涙が零れ落ちる。

奇跡は２度もないから奇跡であって、
ひろと自分の間に運命なんかどこにもないって本当はとっくに分かってるのに。

最低な自分がこれからしなきゃいけないのは
ひろへの想いを心から全部消して、裕太ときちんと向き合うこと。

だから。

今日だけは
あの日に想いを馳せて、ひろだけを想うことを許して欲しい。

明日になったら裕太に向き合うから。

そう思った時だった──────。