嘘つきなキス２ (ページ3)

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３北山side ページ3

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玉森がAを本気で好き───？

「いつから……？」

「わかんない。初めて会った時からそうだったのかもしれないし。でも自覚したのは昨日かな」

「また急だな」

思わず苦笑いすれば、

「そういうもんでしょ、誰かを好きだって思う時って、好きになってる時って」

玉森が少し俺を憐れむような顔で見るから、

ああ、あいりも、藤ヶ谷もそうだったんだろうか、とふと胸が苦しくなる。

それをあの時、あいりを詰って、藤ヶ谷を責めた自分はなんてガキだったんだろう。

「そっか……だからか」

玉森が変わった理由。

自分自身の欲や向上心がそれほどない玉森が
今回に限って、音楽に真剣に向き合おうとしてる理由。

全部、
全部、Aだったんだな。

好きな女の前ではかっこいい自分でいたい、凄いねって思われる自分でいたいっていう気持ち。

玉森にとってはそれこそが原動力なんだろう。

決してそんなことで、とは思わなかった。

今までのどこか心の一部が欠けたような、生気のない玉森を知ってるから。

同じように心の一部がぶっ壊れた俺に親近感を持ち、だから長い間一緒にいてくれたのを知ってるから。

俺たちの音楽に絶対玉森は必要だ。

そしてその玉森にAが必要なのであれば。

「わかった、Aとはちゃんとする」

横尾さんにも、桜井さんにも言われたことを思い出しながら、玉森にきっぱりと言い切る。

「その代わり、俺が言えた立場じゃねぇけど、
Aを泣かせんなよ」

「分かってる、全部ほかの女とは手、切ったから」

「ならいいけど」

「で、ミツは？ミツはほんとにそれで大丈夫？」

玉森はとっくに俺の気持ちに勘づいてるのかもしれない。

俺が本音を言えば、正々堂々と勝負しようと言ってくれる気がした。

だけど、

「は？俺は別に大丈夫だけど」

再びバンド内で恋愛絡みのいざこさなんて起こしてる場合じゃない。
真面目に音楽をやってきた、宮田や二階堂にも申し訳がたたない。

こんなの、Aと出逢う前にただ戻るだけで、大したことじゃない。

それに、

これはきっと、今までAの気持ちを弄んで
自分に都合のいいように楽しんできた罰なんだと思えば──────。