信仰157 ページ38
恋を失うと書いて失恋と云うが、私はどうにも違うと思った
失えるならどれだけ楽なことか。さっさと失くしてしまえるなら、こんな想いを知ることもきっと無かった筈だ。
彼女に振られた後でも、私の中には残念ながらあの焼けるような痛みが遺ったままだ。決して失ってなどいない。
思えば私は、最初からこうなることを分かっていたように思う。
彼女を手に入れることはきっと出来ないと分かっていた。彼女が私ではなくあの男を選ぶような気はずっとしていた。
何故分かったかって、そりゃあ、
(……ずっと見ていたから)
ずっと彼女だけを見ていた。ずっと彼女だけを求めていたから。だからなんとなく、自分がこうやって恋を失うような気はしていたのだ。
(ねぇ織田作、私の孤独を埋めるものはちゃんとあったよ)
それは確かに存在していた。存在はしていたのだけれど。
結局それすら、私は手に出来なかった
詰まるところ私は、永遠に孤独であり続けるべきということなのだろう。それはそれでいいか、なんて。
(だって今更、彼女以外なんて)
Aちゃん、私はね、本当にもう君以外要らなかったんだよ
*****
「……太宰さん、あの」
「ごめん」
私が何か言う前に太宰さんは掴んでいた私の肩を離した。そして数歩後退して距離を取り、ふわりと柔らかく笑った。貼り付けたような笑顔だった。
「……ありがとう、真剣に考えてくれて」
「いえ……」
「あぁ、そうだ。私は先刻までダサい帽子を被った男と飲んでいてね」
すると太宰さんは頓狂な程明るい声を出して話題転換をした。
「私は先に出て来てしまったのだけど、その男は恐らく職場へ舞い戻った筈なのだよねぇ。もしかしたら優秀な部下の助けがいるかもしれない」
そう言うや否や太宰さんは私の背後に回ってぐいぐい私の背中を押し始めた。うわわ……！
「あっ、ちょ、太宰さん！？」
「そらそら行き給え社畜代表くん。上司が困っているぞ」
「で、でも……！」
「いいから」
急に太宰さんの声が詰まったような声になった。そしたら、次に「すまない」と何故かまた謝罪を小さく口にした。
「……すまない。今、顔を見ないで欲しい」
勝手ですまない。そんな風に言う太宰さんの言葉に従えない筈もなく、私は太宰さんの言う通り彼の顔を見ないように頭を下げて走り出した。
無性にあの人に会いたくなった
*****
『……愛して、いたんだけどなぁ……』
醜い雫が、落ちていく
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1336人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おれんじ(プロフ) - とてもとても面白かったです！なんか感動しちゃって泣いちゃいました笑素敵な作品をありがとうございます！ (2021年4月3日 22時) (
レス) id: 0eb527936d (このIDを非表示/違反報告)
チキン - すごいっす！双黒が凄いかっこよく書かれてました。！でも太宰さんENDも見たい気持ちも少しあったかも……。これからも応援してます★ (2019年6月24日 22時) (レス) id: 4977555463 (このIDを非表示/違反報告)
存在理由【レゾンデートル】 - そしてこの作品とても面白かったです！また新作も作ってくれると嬉しいな〜なんて・・・。。これからも頑張ってください！！(◇∀◇) (2018年5月3日 23時) (レス) id: 2916bffe8d (このIDを非表示/違反報告)
存在理由【レゾンデートル】 - 初コメントでこんなこと言うのもあれですが、ハイキューの個人指導塾のやつ、修正おわってなくていいのでパスワード解除していただけないでしょうか・・・？無理にとは言いません！！そ (2018年5月3日 23時) (レス) id: 2916bffe8d (このIDを非表示/違反報告)
yun(プロフ) - 初コメ失礼します！とても素敵な作品でとても楽しく読ませて頂きました！続編楽しみにしています！ (2018年3月5日 15時) (レス) id: 568876bb4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：無気力感
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年5月6日 16時
