31.《中原さん》 ページ32
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『な・か・は・ら・さんっ!』
黒い外套を羽織った肩を叩くと、ぐるっと勢い良く振り返る小柄な後ろ姿。
「…また手前か」
私の顔を見た途端、そのただでさえ鋭い目を更に鋭くさせた。
あの日、初めて中原さんに出会った日から、私はこの場所に通うようになった。
正直、もう会うことはないと思っていた。
でもあの日から何故か彼のことを考えてしまう日が続き、無理矢理考えないようにしても余計気になってしまって、結局我慢できずにこうして会いに来ている。
『こんにちは、お仕事ですか?』
「手前には関係ねェよ餓鬼。つかもう此処には来んなっつっただろうが」
『えへっ♡中原さんに会いたくて♡』
わざとおどけてみせると、中原さんは「あァ?」とまた怖い顔になった。
私はうわあ、流石マフィア…と感心する。
我ながら能天気を極めている。
「…ったく、手前の肝の座り方はただの一般人の域を超えてるぜ」
『ありがとうございます?』
「褒めてねェよ」
『あだっ』
呆れて溜め息を吐く中原さん。
ばちんっとデコピンされ涙目でおでこを押さえる。
一応力加減はしてあるんだろうけど、それでも痛い。
「今日は敵組織とぶつかる。巻き込まれたら洒落にならねェぞ」
『それはまた物騒なお話ですね』
「なァに他人事みたいに云ってんだよ。とっとと帰れっつってんだよ」
『はいはい。判ってますよ、ガキンチョは大人しく帰りま──』
これ以上中原さんのストレスの種を作りたくないので、「また今度来るか」と思い踵を返した。
が。
「危ねえッ!!」
『きゃあ!?』
ぐんっと強い力で引かれ、完全に無防備だった私の体は後ろにあった壁にぶつかった。
その拍子に強かに背中を打って痛みが走る。
『いっっ…!?中原さ、如何したんで……』
何が何だか判らないまま痛みに耐えていると、今度は体が持ち上げられた。
「え?」と目を見開く。
口を開く間も無く、ふわっとした浮遊感が体を襲う。
『…え?え??……ええぇ!!?』
「黙ってろ!舌噛むぞ!!」
ひえ、と情けない声が喉から出た。
ええっと、今私は中原さんに所謂お姫様抱っこっていうヤツをされていて、そして中原さんは屋根の上を駆け抜けていて………
って、如何いう事ぉぉぉぉぉ!!?
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奏翔 - とても面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (2023年3月21日 20時) (レス) @page50 id: 49dd49021f (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - とても面白かったです!更新楽しみにしてます! (2023年3月17日 10時) (レス) id: e237c48342 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - 瑠李さん» ありがとうございます!( ;ᵕ; ) これからもお付き合い頂けると嬉しいです! (2023年2月3日 7時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - ゚+。:.゚おぉ(*゚O゚ *)ぉぉ゚.:。+゚めっちゃ楽しみに待っていました٩(๑>∀<๑)۶更新ありがとうございます<(_ _*)>麦子さんの小説は大好きです。頑張ってください。これからも応援してます。 (2023年1月19日 0時) (レス) @page48 id: 6b9c5dcab8 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - Senaさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです…😭更新頑張ります! (2022年5月2日 1時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦子 | 作成日時:2018年4月28日 20時