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・
「……あ」
『?』
「腕、怪我してます…!」
『え』
突然観音坂さんが私の腕を掴んでそう言うからつられて見てみると、シャツの袖から出た部分に何か鋭利な物で切ったような傷が付いていた。
割と深めにいってる気がするけど、全っ然気付かなかった。
色々とギリギリだったからそんな事も気にしてられなかったのだろう。
自覚すると同時に、遅れて痛みがやってきた。
「俺、良い病院知ってます!」
『あ、いや、この位大丈夫ですよ』
顔を青くした観音坂さんが慌てて立ち上がった。
だけどそんな彼に私は咄嗟に笑顔を見せた。
…こんな怪我見てからじゃ何の説得力もないけど。
「何言ってるんですか!全然大丈夫じゃないでしょう!!傷が残ったらどうするんです!?」
『っ、』
今までで一番真剣な表情を見せる観音坂さんに気圧されて、思わず言葉に詰まる。
びっくりすると同時に、「ああ、この感じ懐かしいな」なんて事を思った。
…幼い頃は何かある度に怪我をしていて、家族や聖羅に怒られたり心配かけたり泣かれたりしていたから。
「ついて来てください」と言うなり、観音坂さんは私の腕を引いて歩き出した。
有無を言わせない頑固な彼を見るのは初めてだ。
まだ会って2回目だけど、新しい一面を見れた気がした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・
『……病院ってここだったのか…』
────数分後。
私はシンジュクのとある病院にいた。
「それにしても、女の子がこんな怪我をするなんて……一体何があったんだい?」
私の腕に包帯を巻きながらそう言うのは、このディビジョンでは知らない人は居ないであろう、神宮寺寂雷先生だ。
私のこの怪我を見るなり目を丸くして、急いで手当てをしてくれた神宮寺先生には感謝しかない。
「それ、俺も気になります…」
苦笑いしてる私の後ろから弱々しい声が発せられた。
言うまでもなく、この病院まで連れて来てもらった観音坂さんだ。
さっきまでの強気な彼は一体どこへ行ってしまったのだろうか。
『えっと、実は……』
神宮寺先生の真剣な眼差しに耐えられず、私はあのビルであった出来事を話す事にした。
………それでは、少し時間を戻そう。
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みゆ - 続き気になります〜!更新待ってます! (1月20日 15時) (レス) @page34 id: 38735f9208 (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続き気になる〜更新がんば (2022年5月20日 21時) (レス) @page34 id: e3725c1631 (このIDを非表示/違反報告)
ベル(プロフ) - え?続きが気になるぅ!!更新頑張ってください! (2021年9月11日 0時) (レス) id: efb845659a (このIDを非表示/違反報告)
しっとりチョコがすごく食べたい。 - うぅ……癒しを!!癒しを恵んでください!!更新待ってますぅぅぁぁぁ!! (2021年1月10日 15時) (レス) id: 7e61cd56ff (このIDを非表示/違反報告)
けい - お話めっちゃ面白いです!更新頑張ってください! (2020年12月25日 16時) (レス) id: 54e19010c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦子 | 作成日時:2018年12月6日 22時