JKとちびっこマフィア【番外編】 (ページ10)

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簡単な依頼の筈だった。

依頼人を付き纏っているという輩を捕まえれば終わる筈だった。

────なのに。

『……何考えてるんですか？』

冷たいAの声が響く。

彼女が見下ろすのは、依頼人であるこの企業の社長だ。

「…真逆、付き纏ってる輩がポートマフィアだったとは」

敦が溜め息を吐く。

どうやらこの社長、何かしらやらかしてポートマフィアの怒りを買ってしまったよう。

この街の夜の支配者を怒らせれば、翌日には海に浮いているか見せしめに利用されるのがオチだ。

保護してもらうなら軍警へ行って欲しいところだが、それもできない理由があるらしい。

『……で？何したんですか』

「ポートマフィアの構成員から、組織の機密情報を買った。
だがそれがバレてその構成員は消された。次は私だ……殺される…！」

震える手で白髪の混じった頭を抱える男。

そんな彼を「殺されて当然ですね」とAが一刀両断した。

＂ポートマフィアの機密情報を買った＂？

莫迦なのか？

バレたら百パーセント消されるに決まっているだろう。

とんでもない依頼を受けてしまった…とAは頭痛のする頭を押さえた。

『はあ…これはとても私達の手には負えません。軍警に保護してもらってください』

「そんな事をすればこの会社は終わる！できる訳が───！」

勢いよく立ち上がった男に、Aはすっと目を細めた。

『………じゃあ聞きますけど、命と会社、どちらが大切ですか？』

「…ッ！」

息を詰まらせる男を見て、彼が命の方を取ったと判断したAは直ぐに軍警へ連絡を入れた。

軍警に保護してもらえばマフィアとて迂闊に手出しはできないだろう。

『軍警が到着するまで十分くらいです。其れ迄の辛抱────』

と、Aがそこまで云った時。

ズガァン！！！！

社長室の扉が吹き飛んだ。

そして、靴音を響かせゆっくりと入って来る人影があった。

黒い外套、青白い肌、漆黒の瞳。

そして…彼の周りに蠢く黒獣。

「────芥川！！」

敦が鋭く叫ぶ。

嗚呼……最悪の展開だ。

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