14 ページ15
・
今晩の二人のことを考慮してなのか、人の気配がない屋敷。
廊下を走る僕の音がやけに響く。
一番奥の部屋の襖を勢いよく開けると、
着物を乱したAが座っていた。
「ま、ふゆ」
僕の名前を呼ぶより早く、力いっぱい抱きしめる。
抱きしめたAの身体はずっと華奢で。
ああ、もっと早くこうやって抱きしめてあげたかった。
「・・・私、傷があるからお嫁になれないんだって、」
泣かないで、そう言う代わりに
白い頬に伝うAの涙を
舌で舐めて掬い取る。
「この傷は私の誇りなのに。
だって、真冬を守った証だもの。」
僕の服をぎゅっと掴んで、
悔しい、と肩を震わせて泣くお姫様。
僕の為に泣くその姿がいじらしくて。
「A、好きだよ。」
心の奥底にしまって、
伝えてはいけないとわかっていた言葉。
それでも10年間、ただAだけを想っていた。
「ねえ、真冬。」
目に涙を溜めて、僕を見つめる愛しいお姫様。
「・・・お願い。私を、抱いて」
17人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
麦(プロフ) - 此花さん» ありがとうございます!両作品とも見て頂いているなんて・・・嬉しい限りです!(涙) (2018年2月22日 10時) (レス) id: 05358902b3 (このIDを非表示/違反報告)
此花 - ヤンキー君とお嬢様 から来ました。このお話もとっても素敵で続きが待ち遠しいです。楽しみにしています。 (2018年2月22日 0時) (携帯から) (レス) id: ec1574e89f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:麦 | 作成日時:2018年2月18日 23時