*ﾟ*金魚花火21*ﾟ* (ページ3)

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【５７２】side O ページ3

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文乃「組長さんに怒られるわね」

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龍村の屋敷の広大な庭の、奥の奥

誰もいないだろうって場所をわざわざ選んだというのに

なんでこの子は、あっさり俺のことを見つけてしまえるんだろうか。

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文乃「せっかく死んだってことにしてたのに、出しちゃうなんて

誰かに目撃でもされたら？……台無しじゃない」

智「だったらどうすればよかったの」

文乃「……智さん…？」

智「あの場面で俺があいつを地下から出さなかったら

俺が、あいつとの勝負から逃げたってことになる。負けを、認めたってことに」

文乃「智さん！」

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しゃがみ込んでいた俺の背中を、文乃ちゃんがぎゅっと抱きしめた。

夏も、夜になれば少し涼しくて

虫が鳴くのを聞けば、少し寂しくて

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智「そのままで……絶対に、前に回らないでね」

文乃「……うん」

智「分かってるんだよ、こんなことずっと昔から分かってたことだよ。

勝負にもならない」

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顔を見られなくてもバレバレだ。

こんなに声が震えたら。こんなに肩が震えたら。

こんなに、喉から、嗚咽が漏れ出たら。

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智「だけど好きだったんだ……っ、好きなんだよ！」

文乃「……っ、うん…」

智「こんなに好きなのに！

どうして俺じゃ駄目なんだろう、どうして俺に振り向いてくれないんだろう

どうして、どうして……」

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〝智さんとの恋は、幸せだった。

きっとこれからも……前みたいに、幸せに…”

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智「どうしてこれからも、ずっと幸せにいられないんだろう……っ、

Aとの〝これから”が描けないんだ、夢が、未来が……浮かんでこないんだよ……」

文乃「うん……っ、うん……」

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文乃ちゃんが、泣いている。

俺を抱きしめる力が強くなる。〝大丈夫だよ”、〝大丈夫だよ”。

〝私も一緒に、苦しいから”。

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