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いくつかの薬をかき混ぜながら、白澤は口を開いた。桃太郎には不足した薬草を取りに行ってもらっており、扉の近くには納期の迫った漢方薬を催促しに来た鬼灯が立っている。
「―――そういえばさ」
「なんでしょう」
「百年くらい前に僕の角をあげたでしょ」
「ああ、ありましたね」
 それは、神を殺す薬のための材料を得るために白澤が提示してきたものだ。死にたいと言った神の顔を鬼灯自身は見ていないが、薬は完成し、彼女は人の子としていつか転生するだろうということだけ聞いた記憶がある。
「あれ、結局何に使ったの?」
「呪いに使いました」
「はぁ!? もしかして最近女の子に振られ続けてるのってそのせい!?」
「それはいつものことでしょう。―――嘘ですよ。ちゃんと研究で色々試させていただきました」
「どうだった?」
「あれだけの量で何かわかる方がおかしいですよ。閻魔大王が空飛べるようになりましたけど」
「わかってるじゃん! というかお前上司で効能試したの?」
「死にませんし」
「お前死んでも弟子に取りたくないな」
「私も死んでも貴方に弟子入りする気はありませんよ」
「はいはい、薬持ってとっとと帰れ!」
 そういって白澤が無造作に投げた紙袋を、鬼灯は難なく受け止めた。中を確かめて頷く。
「どうも。請求は閻魔庁にしてください。では」
 礼をすることなく店を出た鬼灯に、白澤は憎しみを込めて舌を出した。その直後、開いたままの扉から差し込む光を人影が遮った。咄嗟に険悪な表情を取り繕い、白澤は歓迎の向上を述べた。
「いらっしゃい」
「すみません、冷え性の薬ありますか?」
 返ってきた女性の声に引っかかりを感じて入り口の方を見ると、黒い髪を真直ぐに伸ばし、柘榴色の瞳をした女性がにこやかな笑みで立っていた。その容姿に白澤が一瞬瞠目して、そして酷く幸せそうに笑った。
「勿論。ちょっとお話ししていかない? お茶出すよ」

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設定タグ:鬼灯の冷徹 , 白澤 , 鬼徹   
作品ジャンル:恋愛
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作者名: | 作成日時:2020年5月4日 2時

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