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桃太郎が店に戻ると、白衣を血で汚した白澤が疲れた笑みで手を振っていた。事情を知らなければサイコパスに見えるぞ、と桃太郎が心中でぼやいたが、其処に気づくセンスを白澤は持ち合わせていないようだった。カウンターには汚れた何枚かの手拭と抜き取られた矢が置かれている。
「ああ、おかえり桃タローくん」
「とりあえず取ってきました」
「うん、十分十分。」
籠の中身を確認した白澤は頷くと、桃太郎にそれを干すように指示した。甘草は鎮痛剤に使うものだが、今残っている量では一回分にしかなりえない。
「……ってそれ、僕が今すぐとってくる必要なくなかったですか?」
「いてもやってもらうことなかったしねぇ。焦ってる人には簡単な指示を出す方がいいんだよ。落ち着いたでしょ?」
「まぁ、それは。さっきの人は……?」
「一命は取り留めた……というか本来こっちの住人だから死なないよ」
その科白に露骨に安心した顔を浮かべた桃太郎に、白澤は思わず噴き出した。
「な、なんですか!?」
「ふふ……いや、桃タローくんは優しいなぁって」
「はぁ?」
「なんでもないよ。服着替えておいで」
桃太郎ははぐらかされたことに不満げにしながら、「白澤様も着替えた方がいいですよ」と言って奥の方へ入って行った。
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作者名:鵺 | 作成日時:2020年5月4日 2時